コラム「木谷高明の視点」

第9回 「増税イヤー・2014年の展望と課題」

2014年01月31日

ブシロード社長の木谷です。2014年最初のコラムです。
改めまして、明けましておめでとうございます。今年もたくさんの仕掛けを用意しておりますので、楽しみにしていてください。

年末年始、「今年はどうなるでしょうか?」という質問や会話は多かったですね。ただの年越しではなく、今年は4月に消費税の増税が控えていますから、より一層、気になるものです。
私自身、結論からいえば、日本全体のマクロ経済では緩やかに上昇し、個々の家計、ミクロ経済では窮屈にならざるをえないと考えています。3%分、モノの価格が上がるのですから当然です。
景況感でいえば、一般的に1~3月は駆け込み需要でプラスになっている分、4~6月がマイナスになるという言われ方をしています。目先は良く見えますがどこまで続くのか、という懸念はあります。

年末年始のテレビCMでは、自動車や不動産の駆け込み需要と、スマートフォン向けゲームで各社が独自に広告を打ち始めたおかげで枠の取り合いになっていました。
しかも、昔はテレビのCM枠が埋まったらウェブや新聞や雑誌へと需要が流れて行ったんですが、今回はテレビだけに集中していましたね。3月までの駆け込みという期限を意識した瞬間的な効果を考えれば、テレビが強い。
だって、テレビで放送された番組がネットで話題になることはあっても、ウェブの騒ぎがテレビで話題になることはほとんどありません。

さておき、4月以降の冷え込みに対して、金融緩和や円安政策でのフォローが当然あるでしょう。株や不動産の資産価値を上げて、円安で自動車や家電の輸出企業の収益を良くして、部分的な盛り上がりを作っていくと思います。その盛り上がりが日本経済全体に波及すれば、今年後半、しっかり持ちなおしますよ。景気の上げ下げが雰囲気から始まることって、実際にあることですから。

ではカードゲーム市場はどうなのか? やはり3~4月にかけては店頭価格の変動もありますから、発売の間隔を開けようと思いますし、影響はあります。予想では750億円から800億円の昨年並みになるでしょう。

昨年後半に新規タイトルがいくつか出ましたが、既存タイトルも含めて全部が伸びるなんてありえません。キャラクターを借りてきて乗せただけのタイトルでも小規模にビジネスが成立するかもしれませんが、もうそんな安易な流れに乗るお店ばかりではないでしょう。
イノベーションがあり、新しいユーザーを開拓して連れてくることができるタイトルしか、次の成長を担うことはできません。
弊社タイトルでいえば、『ヴァンガード』は毎年の「大ヴァンガ祭」を中心に盛り上げていますから、たとえば『ChaosTCG』では美少女ゲームのメーカーと協力してビジュアルやキャラクター、作家を前面に出したイベントを作ることも考えられます。
ハイブリッド型の『ファイブクロス』ならなにしろ画面から声が出るので、声優縛りデッキという遊び方もできます。

ショップは、増えたタイトルの選択眼が重要になります。
1月に始まった『バディファイト』だと、様子見している場合ではありません……こう言うと手前味噌なんですが、本当のことです。
なぜならば、流行り出して後から乗っても、地域で一番店にならないとメリットが薄くなるんですよ。ゲーム内容にイノベーションがあって、広告によって新規ユーザーを引きこんでくる垂直立ち上げを仕掛けているタイトルが『バディファイト』以外にありますか? ってことです。

逆に、下降トレンドのタイトルに絞ることで、地域の一番店としてユーザーを集める戦略もアリですけどね。
つまり、上昇トレンドのタイトルで新規ユーザーを呼び、下降トレンドのタイトルでも固定ファンの確保を目指す。
タイトルの組み合わせ、選択眼が本当に重要になってくると思いますよ。
他に独自のサプライを充実させるとか、公認大会で工夫するとか、お店の特色を出す方法はいくらでもあります。店舗数自体はやや減っていく傾向にあり、絞られていきますので、ここで生き残ったお店が次の「カードゲーム第3次ブーム」に乗れるのではないでしょうか。
そのときは、プレーヤー(メーカーもお店もユーザーも)もう少し入れ替わっているかもしれません。

もしかすると、第3次ブームではスマホ対応のハイブリッド型が進化して主役になっていいるかもしれませんよ。
カードに文字がなくて全世界共通仕様とか、お店にデータ連動のデジタル対戦台が置かれるようになってるとか、販売もプリクラ形式(販売筐体の中で印刷)になったりして……。
新年一発目らしい夢物語ではありません。ありうる進化、変化です。

増税のショックがどう出るか。不穏な流れを感じますが、やるべきことをやるしかありません。
年間を通じた販売計画、プロモーションを企画して、一緒にカードゲーム市場、エンターテインメント業界を盛り上げていきましょう!