コラム「木谷高明の視点」

第8回 「遊びの環境に適応するコミュニティを立ち上げる」

2013年11月19日

ブシロード社長の木谷です。
11月に入って、全国各地で『フューチャーカード バディファイト』の体験会を開催させていただいています。
弊社HPでもプロモーションビデオを公開していますし、11月15日発売の『コロコロコミック』からはコミックの連載も始まりました。

すでに問屋さんやショップさん向けに説明会を重ねてきましたが、いまだかつて、こんなに前評判のいいカードゲームはありませんでした。
普段から相当に辛口の店長さんも「面白い!」と期待してくださってます。
逆に「業界人やマニアにウケてることから、一般ウケから遠ざかっているのでは?」
……なんて心配の声まで聞こえてきたくらいです。

でも、私は心配していません。
なぜなら、『バディファイト』は、既存のカードゲームから面白い部分に絞って、楽しむために要らない部分をごっそり、できるだけ削ぎ落としているからです。
これまでカードゲームを遊んできた人も驚くと思います。
だからこそ体験会に来てほしいのです。

削ぎ落としたといっても、ただシンプルになったわけではありません。
ルールや手順のあれこれは公式HPを見てほしいんですが、簡単に言うと「いきなりクライマックス」なんですよ。
サッカーのように、いきなりロングパスして一気にゴールを狙えるというか、総合格闘技のようにいきなり勝負がつく緊張感があるというか……。
とにかく、得点というか勝敗に至る準備段階をすっ飛ばして、最初からガンガン盛り上がってしまうわけです。

それだけに、対戦時間が比較的短くなりました。これも狙ってのことです。
今の時代、遊びにはスマホ的なスピード感が必要になっています。
だって、小学生も習い事だなんだって、忙しいんですよ。共通の遊び時間といえば休み時間の10分とか15分、昼休みでもせいぜい30分あるかないか。
放課後にみんなで集まってカードゲームをするという、濃いコミュニティを作るのは大変なことです。

だから、カードゲーム会社は、カードゲームを始めたい人を取り込める、シンプルで間口の広いタイトルを定期的に作らないといけないんです。

コミュニティを作る、育むという狙いと、新規タイトルを投入することは矛盾しません。
友達と一緒に何か遊ぼうとしたとき、新しいタイトルの方が一緒に始めやすいからです。

今年に出てきた新規のカードゲームは、どれもマニア、ゲーマー向けだと思います。
『マジック・ザ・ギャザリング』を体験した世代が作り手に回っているからですが、どれもゲームとしてはバランスが取れていて、競技性が高い。勝敗にこだわるものになっています。
対戦ゲームなんだから競技性があるべきという発想は、『マジック』の呪縛なんです。
勝敗を競い、強くなるためのスポーツ的なゲームだったら、参加者が多くて高度なタイトルが1つあればいいじゃないですか。

でも、現実はそうではありません。
カードゲームだけでなく、趣味に求められているのはコミュニティなんです。
どうやって友達を作って、何をして一緒に遊ぶか。
そのためのツールをみんな探しています。
友達と一緒に、すごいカードを使って、ワクワクした“ごっこ遊び”をしたいんです。
カードゲームを作るということは、そういうコミュニティを立ち上げることなんですね。

面白い、高度なゲーム性にうなるホビーを作りたいのは、エンジニア的な自己満足に陥りがちです。
もちろん、カードゲーム業界の中でそういうタイトルも必要ですけど、みんなでそこを目指したら、食い合って共倒れになるんじゃないでしょうか。

と、こうやってシンプルだのコミュニケーションだのと強調していくと、『バディファイト』はヌルいと思われてしまいそうですね。
最初に申しあげたとおり、ゲームとしても本当に面白いタイトルです。
実際のプレイングはテクニカルで、どうやって勝つかを考え抜くのは難しいんです。
それこそ、マニアのカードショップ店長や業界人が評価しているわけですから、間違いないです。
マニア、ゲーマーの方も、ぜひ体験して頭を悩ませてください。

ブシロード史上、最高にエキサイティングなカードゲームができましたので、発売まで、『バディファイト』をいかにして知って、楽しんでもらうかに全力を尽くします。
目標は小学校で、クラスの半分の男子が『バディファイト』を遊んでいるような状態を、全国に作ります。
『バディファイト』が流行っているクラスをどれだけ作れるか。そこに勝負をかけます。

『ヴァイスシュヴァルツ』でも『ヴァンガード』でも、ブシロードは新しいカードゲームユーザーのコミュニティを作ってきました。
『コロコロコミック』さん、アニメでは『OLM』さんの力も借りて、『バディファイト』で小学生たちの間にまた新しいコミュニティを立ち上げます。もしくは、小学生のコミュニティに入り込んでいきます。

本当は親子でカードゲームで遊ぶことが一般化してほしいんですが、それには初期のカードゲーム世代が親になって、その子供が小学生になる時代……あと数年は待たなくてはいけませんね。

ブシロードは、今の市場だけでなく、年代、世代を超えたコミュニティを立ち上げ続けていきます。
長い目でも、ご注目ください。