コラム「木谷高明の視点」
第6回 「売り上げ160億円の先にある世界展望」
2013年09月06日
ブシロード社長の木谷です。いよいよ『月刊ブシロード』が本日発売になりました。「ヴァンガード」のコミックと情報で130ページの大特集を組んでいます。付録も充実しています。ぜひ手に取って、読んで、友達や仲間といっしょに楽しんでください。
さて、今回は“160億”という数字から話をさせていただきます。
おかげさまで、今年7月期末でのグループ全体の売り上げは約160億円を達成できました。ユーザーと関係各社に御礼申し上げます。
昨年10月から12月にかけては、「ヴァンガード」の売上が停滞し、「ブシモ」の立ち上げと重なった時期が苦しかったんですが、「ヴァイスシュヴァルツ」が参戦タイトル数も増えて好調に推移して、助かりました。最後の7月は単月で20億円という、過去最高の売り上げを達成でき、結果的には前期から売り上げを10億円を上乗せして着地できました。
8月から始まっている今期は売り上げ200億円を計画しています。
10月から女児向け玩具の「マイリトルポニー」の商品展開が始まりますし、ヒーロー特撮番組の「ファイヤーレオン」も2期がスタートします。
カードゲームでは、まず「ファイブクロス」が11月に発売になります。アナログとデジタルのハイブリッド型の新規タイトルとして、新しいユーザーさんに届けていきます。
そして、特に注力しているのは、来年1月に世界同時発売する「バディファイト」です。これまでのカードゲームになかった、新しい仕掛けで展開します。詳しくはまだ言えません。ごめんなさい!
改めて前期を振り返れば、内容面では「ヴァンガード」「ヴァイスシュヴァルツ」の英語版を卸しているシンガポール現地法人がもっとも利益率が良かったです。やはり、海外市場の開拓は必須だと再認識しました。
前期のカードゲーム関連の売り上げは国内外合わせて130億円で、そのうちの20億円が海外だったんです。海外売上比率は現在15%程度なんですが、まだまだ伸びそうです。逆にいえば、2018年頃には海外での売り上げを50%まで伸ばしていかないと、大きな成長は見込めないと確信しています。
海外市場の中心は当面、北米と東南アジアです。とりわけ成長が見込める市場は東南アジアでしょう。
GDPで見ればインドネシア、シンガポール、マレーシア、フィリピンが中心で、ASEAN諸国を全部足すと200兆円くらいです。日本のGDPが450兆円ですから、半分弱。
でも肝心なのは経済成長率なんですよ。ASEANの主要国では年6%程度の成長を続けています。日本が1%とか2%目標とかやっと掲げているというのに。6%の成長が11年、12年も続けたら倍になるんです。ですから、経済の規模としては2025年くらいには日本とASEAN諸国は同等になっていると予想できます。
旺盛な成長力の源泉と期待されているのは若年層の人口です。なにしろ、14歳以下の人口が、インドネシアだけで6000万人、マレーシア、フィリピンを合わせたら1億人いるんですよ。これから仕事をして家庭を持って経済の担い手になっていく層が非常に多い。日本には14歳以下が1800万人程度ですから、経済規模が縮小していくことは目に見えています。年齢別の人口比は5年、10年先の経済規模を見通すうえで重要で確実な指標なんですね。
今期は、前期の売り上げ160億円の先へ進むために、海外向けのタイトルを強化します。
「ヴァイスシュヴァルツ」がアメリカでも人気を高めていますので、カートゥーン・ネットワークで放送される「ソードアート・オンライン」に合わせてCMを打っています。米国でも萌え系を流行らせていきたいですね。
来年1月には「バディファイト」の日本語版・英語版の世界同時発売がありますから、「ヴァンガード」「ヴァイスシュヴァルツ」と合わせて海外売上の柱を太くしていきます。次いで、スマートフォン向けサービス「ブシモ」のコンテンツも海外に持っていく。さらに米国のロスを起点にスペイン語版も稼働の予定で、さらに市場は広げていきます。
これらは、あくまでも現状の戦略ですけどね。
カードゲーム等の商品を海外で展開する際、地域の文化や規制に合わせつつイラストなどもローカライズをしていきますが、ゆくゆくは海外に開発チームを持つことも考えています。日本のコンテンツ開発の技術に、海外の人材がいつ追いついてくるか、という段階ですね。
その時代に備えて、地域に合わせた大胆な投資や戦略をトップダウンで迅速に行えるように、英語や北京語に通じたリーダーが必要です。
ただ会話ができるとか、勉強して通訳ができる語学力だけではいけません。ネイティブな外国語環境で育って、口げんか、つまり議論や交渉をするには現地の考え方や文化を知らなければいけません。
面白いもの、日本でウケているものを黙ってもっていけば海外でも売れる、ウケるという時代ではありません。
カードゲームにライセンスをお預かりしている版元様や取引先にも海外市場の可能性と現実を知ってもらいたい。今、そのための資料を準備しているところです。
海外市場はリスクが高くて割に合わないとか、逆にとにかく海外進出すれば市場が広がるとか、イメージで語っている場合ではありません。ブシロードは、きっちりとした調査を行って、5年、10年先に通じる戦略を立て、海外市場を開拓していきたいと思います。
皆で日本のアニメ文化、カードゲーム文化等のJAPAN POP CULTUREを世界に広めていきましょう。