コラム「木谷高明の視点」
第5回 「カードゲームにも大義と公約を!」
2013年08月13日
ブシロード社長の木谷です。前回は新作『バディファイト』についてお知らせしましたが、今回は新たに立ち上げる雑誌『月刊ブシロード』と、もうひとつの新作『ファイブクロス』についてお伝えしていきたいと思います。
ついに社名が雑誌名となった『月刊ブシロード』ですが、これは『カードファイト!! ヴァンガード』のコミックなどが掲載されていた雑誌『ケロケロエース』が休刊することによるものです。これまでのコミックはこちらに移籍しますし、大会情報や新たなオリジナルコンテンツなども載せていく形です。これまで大変お世話になった『ケロケロエース』さんの休刊は非常に残念ですが、『月刊ブシロード』でも、販売はKADOKAWAさんにお願いしますので、今後ともいいお付き合いを是非させていただきたいと思っています。
『ヴァンガード』が他雑誌への移籍ではなく、新雑誌を創刊することになった理由については単純です。出版の先行きが不透明なこのご時世、どの雑誌がいつ廃刊になるかわかりません。「次の雑誌に移りましたが、やっぱり休刊になりました」という形はやはり避けたいですし、ブシロードとしても自前のコンテンツが揃ってきたので、自社の媒体を持つことで、自分たちの出したいものをより明確に出せるだろうということになりました。出版不況の時代ですから、部数はなかなか大変そうだなというのは予想していますが、この雑誌発のコンテンツを盛り込んだり、あるいはブシモのアイテムチケットをつけてみたりと、今後様々な企画を予定していますので、9月6日(金)の創刊をお待ちください。
『バディファイト』と同様に先日発表させていただいた新作カードゲーム『ファイブクロス』についても、現時点でお伝えできる情報をお知らせしておきたいと思います。『ファイブクロス』は当社の『ヴァイスシュヴァルツ』のように、様々なアニメ作品のキャラクターカードが競演するタイプですが、アナログのカードと、ネット上のソーシャルゲームを組み合わせた、ハイブリッド型のカードゲームとなります。システムとしては『キング オブ プロレスリング』に近い形です。
『ファイブクロス』の新機能としては、その場に集まった人たちで通信対戦ができるようになりました。『キング オブ プロレスリング』では特定の相手との対戦はできなかったんですが、『ファイブクロス』ではカードゲームショップでパックを買って、スマホのアプリにコードを入力することで、おたがい対戦することができます。また『ファイブクロス』の特徴として、ネットワーク上での課金は一切ありませんので、その点も安心して遊んでいただきたいなと思います。
『ファイブクロス』のスタートは11月の予定ですが、それに先駆けてプロモーションカードは夏のコミケから配布を開始しておりますし、ベータテストは9月から行う見通しです。現状発表できる参加作品は『ファンタジスタドール』と『IS<インフィニット・ストラトス>』、『熱風海陸ブシロード』の3本ですが、年齢層が上の人でも楽しめるように『ヴァイスシュヴァルツ』では入らないような、少し昔のタイトルも入れていきたいなと考えています。
さて、今回新作以外のトピックとして、この場でお伝えしたいお話は、カードゲームに込められているメッセージについてです。新しいコンテンツを立ち上げる度に聞かれる「いままでとどこが違うんですか?」という話ですね。私はカードゲームはもっとマーケットに対して「なぜこれがいま必要なのか」という問いかけがあるべきだと考えています。「いままでこれだったからこれでいいじゃん」という惰性で出してると、結局は縮小再生産にしかなりません。例えば『バディファイト』は「小学生のユーザーをもう一度作ろう」という大義が明確です。一方の『ファイブクロス』の大義は説明会でも言ってますけども、公認大会の間の時間にぜひ遊んでほしい。隙間の時間をスマホのゲームに取られないというのはハイブリッド型のミッションとして常に掲げていることです。また余談ですが、『ファイブクロス』では現状考えられる最適の海賊版対策もしています。
カードゲームのプロモーションは選挙と似ているとよく感じます。やはり大義、公約が大事なんです。「今度の選挙ではこれを実行するために私は立候補しました」というのが、明確にあるかないか。カードゲームの新作には、なぜこれを出すかという大義があってほしい。しかし、多くの新作タイトルからはあまりそれを感じません。一応伝わってくるものはあります。経営の多角化とか、ソーシャルだけだと不安だから、カードゲームにも進出してきたとか。
そうした大義はもちろん「作り手がやりたいことをやりました」でも構わないわけです。それをユーザーが面白いと思えば大きくなっていく。あるいは二番煎じでも構わない。「あっちにないものがこっちにあります」というリベンジが新たなコンテンツとして広がっていくことも、よくあることです。いずれにせよ「これをやりたい」というマインドが大事ですし、プラスだろうが、マイナスだろうが、エネルギーが必要ということです。カードゲームは垂直立ち上げしなきゃいけないので、お金もふくめて、いろんな意味でエネルギーが必要ということです。
みんなカードゲームを新しくリリースするときに、何のためにやるかをはっきり言わない。本音はいいんです。企業活動として売り上げを上げて利益を上げるためですから。それは別に構わないんだけど、公約がない。「自分たちの好きな物を作っちゃいました」で構わないし「こんな風に遊んでほしい」「お店さんにこんなふうに使ってほしい」「お店さんに売上を作ってほしい」などなんでも構わない。アピール文としてよくある「簡単に奥深いゲームができます」「イラストが綺麗です」「サポートがちゃんとしてます」とか、そんなのは公約ではなくて当たり前の話だと思っています。もっと大義、公約をカードゲームで表明してもよいのではないでしょうか。