コラム「木谷高明の視点」

第50回 激変の年、2025年の荒波を乗り越える

2025年01月06日

今回は2024年を振り返りつつ、2025年の展望を書いていこうと思います。

◆激変する世界で目指す市場は

2025年1月20日に、ドナルド・トランプ氏が米国の大統領に返り咲きます。様々な改革を断行していくでしょうが、これは日本にあてはめると明治維新に匹敵するような大きな変革になると考えています。

当然、世界情勢は激変します。世界情勢が激変するということは、世界経済も激変するということです。そのような情勢の中でも、私たちブシロードは世界に市場を拡大していかねばなりません。

なぜ海外に進出していかねばならないのか。ここで改めて説明しておきます。
何度も述べていることですが、国内の20歳の人口は、直近のピークである1994年には207万人でした。一方で、昨年の出生数は68万人ほどと見込まれていますから、ピークのちょうど50年後である2044年には、20歳の人口はピーク時の1/3を割り込んでしまいます。

他方、世界では年間約1.3億人の子供が生まれていて、まだ世界の人口は増加しています。
また経済的な豊かさも向上していますから、日本のエンターテイメントを楽しむ人はこれからも増えていきます。特にアニメは、現在ではデジタルで全世界に配信できるうえ、ユーザーからすれば労なく手軽に楽しめて“ながら視聴”もできる。とても広がりやすい性質を備えていて、世界の市場を開拓するのにうってつけです。

では具体的にこれから世界のどこに打って出ていけばいいのか。これは世界のどの地域が人口が増えて経済的に豊かになっていくのか、という問いとイコールであると考えると、インド、中東、アフリカといった地域が該当するでしょう。これらは日本人にとってはあまりなじみがない地域です。

たとえば、歴史上の人物やタレントを含め、中国や米国の著名人を挙げろと言われたらどうでしょう。日本人ならだいたいの人が10人以上の名前を言えそうですよね、中には100人以上挙げられる人もいそうに思えます。
ではこれがインドだったらどうでしょうか。インドの著名人を挙げろと言われて、10人以上の名前を挙げられる人がどれだけいるでしょうか。多くの人が5人も言えないのではないかと思います。

逆もまたしかりなんです。日本がインドのことを知らないように、インドも日本のことを知らないはずです。ですから、単純に経済規模や人口の増加を理由に「次のマーケットはインドだ」と断ずるのは危険です。東アジアと南アジアでは、文化圏がまったく違いますから。

ですので、これから先の海外展開はより困難になってくるでしょう。

ブシロードの海外展開は、これまで中国に力を入れていましたが、来年以降は東南アジアにも注力していきます。これまで、Bushiroad EXPOをマレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピンと開催してきましたが、2025年はベトナムとオーストラリアで開催します。

もちろん中国の市場でも手は抜きません。これまでの中国展開の中心は上海でしたが、今後は広州や成都でも展開を強めていきます。

◆カードゲーム市場は2025年も拡大する

2024年のカードゲーム市場は前年比でも伸長しましたが、小売店レベルではシングルの高額カードが売れなくなってきているのが気になります。売上はそれほど変わっていませんが、粗利は少し落ちてきているはずです。ここ数年でショップの数が大幅に増加したので、やや過当競争になってきました。

ブシロードにとってカードゲームショップの重要性は変わりません。「ちほうかっぷ」のような比較的規模の大きいものを含め、ショップさんと組んで大会を開催するなどして、今後もともに歩んでいきたいと思っています。

さて、ではカードゲーム市場全体はどうなるのか。2025年も、微増かもしれませんが引き続き成長すると考えています。

理由は2つあります。ひとつは当社タイトルも含め、来年も新規タイトルが出てくるだろうと予想されること。新規タイトルがいろんな分野からユーザーをカードゲームの世界に取り込んでくれると期待しています。
もうひとつは、本屋やレコード店など、旧来型のエンタメメディアのショップがあまりにも減りすぎているということです。確かに現時点ではカードゲームショップは増えすぎたかもしれませんが、面展開している強みがあります。今後、エンタメ分野の中での相対的比重は高まっていくと思います。

メーカーの供給の増加とユーザーとの接点であるショップの増加が相乗効果を生み、新規ユーザーが入りやすい環境は継続することでしょう。カードゲームに取って代わる、まったく新しい遊びが出るなどのインパクトがない限りは、カードゲーム市場の成長は持続すると見ています。

ただ、前述のように新規タイトルが次々リリースされていく状況ですので、タイトル間の競争は激しいものになります。新規タイトルが5年以上続くロングセラーになるかというと、厳しいかもしれません。なかにはサービス終了するタイトルも出てくるだろうと予想します。

◆2025年のスタートは「BanG Dream! Ave Mujica」で!

最後に、ブシロードの2024年の取り組みと今後について。

カードゲーム事業は、順調に推移しました。
『カードファイト!! ヴァンガード』が、コロコロコミックでの展開と、「ちほうかっぷ」をはじめとした大会の開催、そして評判のいいアニメの3つがうまく結びついて、復活してきました。
『ヴァイスシュヴァルツ』も前年の勢いを保っていますし、新規に立ち上げた『五等分の花嫁カードゲーム』と、お手伝いしている『hololive OFFICIAL CARD GAME』もうまくいっています。

来年発売される新規タイトル『ラブライブ!シリーズ オフィシャルカードゲーム』と、『ヴァイスシュヴァルツロゼ』も、おかげさまで評判がよく、2025年の起爆剤になってくれると期待しています。

調子のいいカードゲーム事業を柱としつつ、ライブエンタメ(音楽)事業も盛り上がってきました。
「BanG Dream!(バンドリ!)」は、現在では7つのバンドが実際に活動しており、ファン層も拡大しています。
そして1月2日から放送が開始されたTVアニメ「BanG Dream! Ave Mujica」が、驚くほどおもしろい作品に仕上がりました。私自身、繰り返し視聴し、全13話をもう5回以上観ましたね。

MD(マーチャンダイジング)事業も育ってきて、海外でグッズがよく売れています。プライズやフィギュアも売れるようになってきました。苦戦していたデジタルコンテンツ(デジタルゲーム)事業も峠を越え、今後は有望な作品も複数リリースされていきます。

カードゲーム事業を中心に、各事業が揃い踏む形となり、ブシロードグループの業績もここからよくなっていくと見ています。低迷していた株価も上向いていくことでしょう。ここからはテンバガー(株価10倍)を目指してがんばっていきます(笑)。

そして2025年のスタートは、なんといってもTVアニメ「BanG Dream! Ave Mujica」ですね。何度でも言わせてください。本当におもしろいですから! 私自身がドハマりしましたから本物です。来期の覇権を取れるアニメだと確信しています。期待を裏切らない出来なので、ぜひご視聴ください。

2025年も最前線で戦っていきます。引き続き、ブシロードグループをどうぞよろしくお願いいたします。