コラム「木谷高明の視点」

第42回 これからのエンタメには"プロレス頭"が必要

2019年09月02日

 7月20日(土)、21日(日)の2日間、幕張メッセにて「D4DJ 1st LIVE」が開催されました。「D4DJ」(ディーフォーディージェー)はDJをテーマにした新プロジェクトで、「バンドリ!」「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」に続く、ブシロードが手掛ける新たな音楽コンテンツになります。

 このタイトルについては、“DJ”という言葉を入れることを前提にどんなタイトルにするかを試行錯誤しました。“D4”は「Dig、Delight、Direct、Drive」4つのDからきています。以前Twitterでもお伝えしましたが、私は「D4DJ」を「バンドリ!」「スタァライト」と並ぶ3大音楽コンテンツの1つにしたいと考えています。10代~50代までの幅広い層をターゲットに展開していきます。男女比率もはじめは男性中心ですが、最終的には男女半々にしたい。そのためにさまざまなイベントを仕掛けていく予定です。たとえば全国のアニクラ(アニソンのクラブイベント)に『D4DJプレゼンツ』コーナーを作ってゲストを派遣するという企画を考えています。日本全国で毎日のように「D4DJ」の共催イベントが行なわれることになります。

 全国のクラブイベントとサポート関係を築くことで新たな宣伝効果が期待できます。これまでブシロードが手掛けてきた音楽コンテンツとの大きな違いはイベントでのタレントの必要人数です。舞台だと1人では仕方がない。バンドもそうですよね。しかし、DJ だったら1 人でも成立する。そのため、多くの会場で同時にイベントを行なうことも可能になります。そのような形で「D4DJ」は「バンドリ!」や「スタァライト」とまた違ったアプローチをしていきたいと考えています。
 10月14日開催予定の「D4DJ 2nd LIVE」、さらに来年1月31日に「D4DJ 3rd LIVE(仮)」の開催も発表されました。そちらで多くの情報を発表することになると思います。楽しみにしておいて下さい。

 現在、「フューチャーカード 神バディファイト」は「名探偵コナン」をはじめ、「BanG Dream! ガルパ☆ピコ」「アイドルマスター シンデレラガールズ劇場」と強力な2作品とのクロス商品が好調のためこのまましばらく勢いが続きそうです。
 「ヴァイスシュヴァルツ」は「艦隊これくしょん -艦これ-」「戦姫絶唱シンフォギアAXZ」「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -Re LIVE-」「冴えない彼女の育てかた♭」「転生したらスライムだった件」と強力なタイトルの参戦が続きます。当社のカードゲームで既存の他社製カードゲームと明らかに性質が違うものは「ヴァイスシュヴァルツ」だけですので、今年の秋はさらに力を入れてユーザーを増やす試みを始めます。「カードファイト!! ヴァンガード」に関してはアプリ「ヴァンガード ZERO」がリリースされてからが勝負になります。

 4月に、新日本プロレスのトップレスラーであるオカダ選手と、声優で知名度も高い三森すずこさんのおめでたい発表がありました。私も純粋にプロレスファンとしてうれしく思っています。
お互いに家庭でも仕事でもベストパートナーとなって、最高のチャンピオンと最高のスターを目指してほしいですね。「ブシロード婚」と話題になった2人の結婚報道もそうですが、これからの時代は“プロレス頭”が非常に重要になってくると私は考えています。

 プロレス頭というのはプロレスファンが使う言葉なんですが、リングの中だけでなく、すべてをプロレスとして考える思考のことです。それがあれば想定外のことが起こっても全部プロレスに落とし込むことができる。ここ最近、作品の中だけではなく外側まで含めてストーリーが必要な時代になってきています。この考え方が現在のエンタメの世界においてとても重要だと私は思っています。

 プロレスラーは現実とリングを行き来することでキャラクターを魅力的なものへと作り上げていきます。たとえば例としてあまり適切ではありませんが、実生活でスキャンダルが出たレスラーがいるとします。そうすると、そのレスラーには、“最低の男”というキャラクターがつくわけです。もちろん世間が許容できるラインというのはありますが、キャラがつくことで、それがプラスになる場合がたくさんある。だから、レスラーは何か身の回りで問題が起こったときに、それをキャラクターに加えられないかと一瞬考える。プロレス頭を使って新たなキャラクターを作っていく。そういう思考は我々にとっても非常に大事だと思います。

 たとえば、新人アイドルのデビューイベントに、5人しかお客さんが来なかったとします。でもそこで腐らずに続ければ、それが数年後に振り返ったときに苦労した歴史になる。つまり、つらい経験や失敗も長いスパンで見て許容することができれば、それが必ずドラマとなるんです。すべてが大成功で順風満帆で進むより、失敗があることで成功が引き立ちます。

 バンドやアイドルが2千人規模のライブ会場で、「次は武道館でやります!」と発表するとお客さんは盛り上がります。それは、のし上がっていくストーリーを楽しんでいるわけです。
 その新人アイドルも、数年後に「最初は5人しかお客さんがいなかったのが、皆さんの応援のおかげでこんなに増えました!」と言えるかもしれない。苦労が多く大変なほど、感動的なストーリーが生まれる。常にそのように考えるクセをつけることが重要です。そうすれば何事もプラスに転換できるはず。

 ブシロードはこれからさらにライブや舞台に力を入れていく予定です。プロレス頭をフル活用して新たなエンタメを届けていきますのでご期待ください。