コラム「木谷高明の視点」

第40回 2大コンテンツの幕引きと新たなプロジェクトの始まり

2019年04月11日

※こちらのコラムはカードゲーマーvol.44に掲載したものを一部編集したものです


 木谷です。『バンドリ!』が相変わらず好調です。アニメ『BanG Dream! 2nd Season』は初回放送からTwitterでトレンド入りするなど話題になりました。テレビやラジオで結果を聞かれた方も多いと思いますが、2月20日に発売されたシングルCDがすべてオリコントップ10にランクインしました。昨年12月に3タイトルが同時にトップ10入りを果たしましたが、今回は同時に6バンドの6タイトルがトップ10に入りました。目指していた成果を残すことができて本当によかったです。ビルボードの方も総合トップ10に3曲が入り、アニソントップ10では1位から5位を独占する本当にすばらしい結果となりました。

 『バンドリ!』も順調ですが、新たなプロジェクトも動き出しています。昨年12月30日にSOUND MUSEUM VISIONで開催した「ブシロード DJ LIVE」で、新プロジェクト『D4DJ』(ディーフォーディージェー)の始動を発表しました。雑誌『月刊ブシロード』にこのイベントの申込券を付けたのですがキャパ550人に対して、3千人を超える応募申し込みがありました。もちろん出演メンバーの豪華さもありますが、私たちブシロードが何かやろうとしているから、初回を見ておきたいと思って応募された方も多かったようです。
最近の若い人は歴史への興味が薄い人が多いと思います。未来に希望を持って今を生きている人ほど、未来を見るために歴史を勉強する。歴史に興味がないのは、つまり未来に希望を持っていないとも言えます。今の若い人には間違いなく暴動願望があると思います。その時が楽しければいい。むしろこんな世の中はひっくり返してしまえと思っている。江戸時代末期の民衆運動「ええじゃないか」のようなものです。
フランスのデモが盛んになっていましたが、傍目には増税でなぜあそこまでになるのかわからない。きっと国外には伝わりきらない、本質的な理由があるのだと思います。しかし、昨年のハロウィンに渋谷で軽トラを横転させた若者たちは、べつに消費税がいきなり20%に上がるといった明確な失政があったわけではなく、自然発生的に漠然とした不満と不安が爆発している。今、日本の若い人たちがそんな状態だからこそ、トランスできそうなものが流行るはず。きれいな形で、時を忘れて騒ぐ形に持っていきたいと考えたのが、このDJ企画をはじめた理由です。
実験的なイベントですので、初回はアルコールありでしたが、アルコールのありなしも含めて、しばらくはいろいろとテストしながら、会場の盛り上がりを見ていこうと思っています。4月5日に開催した「ブシロード DJ LIVE vol.2」ではメインキャラクター8人のシルエットを公開したほか、アニメ化とゲーム化の決定も発表いたしましたので今後の展開も楽しみにしていてください。

 アプリゲーム業界はまだしばらく海外勢の勢いが止まりそうにありません、海外勢以外だと、『FGO』『モンスト』『パズドラ』『ポケモンGO』といった上位固定のタイトルだけが安定している。そこに入ることができればいいですが、それ以下のタイトルは、ブシロードが手掛けるゲームも含め、ころころと順位が変わっていくのが現状です。でもブシロードは音楽やMD(マーチャンダイジング)で横に広げて、総合的に展開する方法をここ1、2年で開拓しました。その結果、いまブシロードグループの中で、特に伸びているのがブシロードミュージック、次にブシロードクリエイティブです。
ブシロードミュージックは音楽を中心に、ライブイベント制作、CD販売などの事業を行なう会社で、『バンドリ!』のCDなどもこちらが手掛けています。ブシロードクリエイティブはグッズの企画・製造・販売を行なっており、ブシロードグループの作品を中心に、それ以外のキャラクター商品も多く取り扱っています。
アプリの競争が激しいため、逆にブシロード本体が伸び悩んでいます。TCGについても、もう一度、我々が業界を盛り上げていかなければと考えています。

 TCG関連では、『ChaosTCG』が、2月22日発売されたブースターパック「探偵オペラ ミルキィホームズ」をもってサービスが終了となりました。
2009年3月21日が最初のトライアルデッキの発売日でしたから、ちょうど10年ほどになります。長く遊んでいただいて大変感謝しております。残念ながら続けることが難しくなった最大の理由は、やはり『ChaosTCG』の参戦作品は半分以上が美少女ゲームタイトルだったことです。そちらのマーケット自体が縮小してしまったのが痛かった。しかし、これほど続くカードゲームというのはなかなかないので、遊んでいただいたお客様や取り扱っていただいた販売店樣のことは、しっかりと胸に刻み続けたいと思っています。

 「ミルキィホームズ」も10年の活動に終止符を打ちました。1月28日に開催したファイナルライブはミルキィらしさが爆発したかなと思います。キャンディーズのパロディでしょうか?そちらで戻ってきて最後に大騒ぎして盛り上げた。本人たちも満足しているんじゃないでしょうか。
ミルキィホームズはブシロード初のオリジナルコンテンツとして、10年間さまざまな展開を行なってきました。
ずっと応援してくださったお客さんには本当に感謝しております。ありがとうございました。『ヴァンガード』よりも「ミルキィホームズ」のほうがアニメ展開が3か月早く、初期のころは『ヴァンガード』のアニメに「ミルキィホームズ」のキャラが登場するようなこともありましたし、最初のオリジナルコンテンツとしてブシロードの現在のコンテンツに与えた影響はすごく大きい。
皆さんがミルキィを応援してくれたことが、今のブシロードのいろいろな展開につながっています。本当にありがとうございました。

 新しい動きも始まっています。昨年末、FORCE OF WILL株式会社が製作を手掛けていたプロジェクト『ドミネイター』の権利が、ブシロードへ移行しました。
まず権利を買った理由ですが、やはり池っち店長(池田芳正氏)の企画というのが大きいですね。企画自体も進んでいましたし、ゲームも遊ばせてもらいましたが面白かった。ただ、すぐに商品化はできないと思っています。当初は2019年中にアニメ放送開始も視野に入れた展開を発表していましたが、新しいカードゲームを立ち上げるのは、アプリゲームを立ち上げる以上に難しくなってきている。どうやったら盛り上げることができるかをしばらく考えたいと思っています。
『ドミネイター』ではない別の新TCGに関しても今年、なんらかの発表を予定しています。そちらに関しても、これまでにないプロジェクトを進めています。夏頃には発表会を開けると思いますのでご期待ください。最近の『ポケモンカードゲーム』のヒットも長く続かない可能性もあります。今年はさまざまな企画でなんとかTCG業界を盛り上げたいですね。

 5月3日(金・祝)、4日(土)に開催される「大ヴァンガ祭×大バディ祭2019+しろくろフェス2019」の会場は広さを昨年の1.3倍ほどに拡大する予定です。最近カードゲームの会社というのが若干薄れつつあるので、それを思い出してもらうイベントになるようにTCG復興の一環としてプロモーションを含めて力を入れていきます。ご期待ください!