コラム「木谷高明の視点」
第37回 未知のエンターテインメントは「未経験の発想」から生まれる
2018年08月16日
木谷です。ここ数か月、『カードファイト!! ヴァンガード』が好調です。7月に発売になったトライアルデッキ第3弾蒼龍レオンと共に、先導アイチと櫂トシキのトライアルデッキ、さらにブースターパック、エクストラパック売り上げを伸ばしています。ただ自分の好きなクランを待っている人も多いので、今月から年末にかけてさらにブレイクするはずです。バミューダ△(トライアングル)のアニメが始まり、それにアプリゲーム『ヴァンガードZERO』も登場する来年の年始からの展開に備えて、盛り上げていきたいですね。
5月にルール変更と新レギュレーション追加が実施されましたが、うれしいことに、ひさびさに遊んでみたという復帰組の人たちが相当数戻ってきてくれていて、この数か月で2 ~3割はユーザーが増えたという感触があります。秋までには4~5割増しになるといいですね。
『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』は7月にスタートしたアニメが非常にクオリティが高いと評判になっています。豪華なメンバーがミュージカルを熱演し、アニメでも同じ役の声優を担当するのが、これまでにない特徴ですね。舞台とアニメが相互にリンクし合う新たなエンターテイメントを目指しています。
このプロジェクトをやろうと思ったのは、いわゆる“2.5次元”の舞台を見たときの違和感がきっかけです。舞台で演じている人の声がアニメの声と違うっていうのは、ファンとしてはどうしても違和感がある。でも、それを解決するには両方のキャストを同じにするしかない。であれば、むしろ先に舞台を披露してキャラクターを印象づけたうえで、その人の声でアニメをやるべきだと考えたんです。そう思いついて始めてみたのですが、前例がないので、もちろん作るのは大変ですけど、原作がない状態で作る舞台はすごく新鮮でしたね。監督もシナリオライターも演者も、原作に一切左右されないので、のびのびと力を発揮できるので、作品から出るオーラも違ってくるんです。
アニメが好調なことで、10月にやる新しい舞台へといい流れができてきていますね。『ヴァイスシュヴァルツ』への参戦も発表になり、9月半ばにはトライアルデッキも発売になります。
今後もミュージカルを原点にして、アニメ、コミカライズ、ゲームアプリと、メディアミックス展開を予定しています。
ミュージカルは「バンドリ!」でやったバンドに比べると人気が横に伝わりづらいという弱点があるんですが、そこをうまく今の勢いを保ってつなぐことができれば、このまま一気にブレイクできると考えています。
6月1日付けで、新日本プロレスリング株式会社の代表取締役社長兼CEOにハロルド・ジョージ・メイが就任しました。彼はサンスターや日本コカ・コーラ副社長を経て、2015年から17年にかけて社長を務めたタカラトミーでは大型IPのテコ入れに着手して同社の業績を急回復させたプロ経営者です。彼の社長就任に合わせて制作したPVが話題になりました。ホテルでのシャワーシーンから始まって、私の電話を受けて、彼が社長就任をOKするという流れなんですが、PVでは彼は英語でしゃべっている、でも、初めて新日本のリングに上がって挨拶する際に、いきなり流暢な日本語を話しだす。本当はネイティブと言っていいほど日本語はうまいんですが、動画の中ではあえて英語をしゃべってるんです。そういうふうに日本人の心をつかむのがとてもうまい。あのPVの制作も本人が作りたいと言ってきたことで実現しました。自分をプレゼンできる人ですね。巡業を一緒に回って、リングの組み立てを手伝う気さくな面があったりと、とても魅力的な人ですね。今後、海外向けにももちろん能力を発揮してくれると思っています。
ミルキィホームズに関しては、6月9日のライブで、休止まで僕がプロデューサーとして関わることを発表をさせてもらいました。プロジェクト発足時から10年間続けることを目標に掲げてきましたが、丸10年に向けてしっかりといっしょに走りぬきたいなと思います。9月29日に仙台、10月26日に大阪と、地方でライブをやりながら、来年1月28日の武道館のファイナルを目指して突っ走ります。
先日、新しい取り組みとして、『トリプルモンスターズ』の発表会と同時に中途採用説明会を行ないました。コンテンツにくっつけて中途採用についての説明会を配信する。私と一緒にうちの社員が4名が仕事内容を説明するという内容なんですが、そのコンテンツが好きな人、関心がある人が見ているので、本当に好きな人が応募してくるんです。やってみて、中途採用とか転職って1つのコンテンツになりえると確信しました。やはりみなさんの関心が高い。今、タクシーに乗ってもテレビを見ても転職のCMばかりじゃないですか。中途採用の求人倍率もここ数年、上がり続けていますし、売り手市場が続いています。不足するものほど価格が上がりますし、値が上がるものをずっと扱っているビジネスは強い。例えば戦後すぐの焼野原で何もないときは食料は輸入したいし、ビルも建てたいし、自動車も作らないといけない。資金需要がものすごくあったんですよね。そうすると需要に合わせて金利が高くなって、銀行とか商社が潤ったわけです。でも今はこれ以上何を作るのかと。そうすると銀行は経営できなくなってくる。ルネサンス期にヨーロッパでペストが流行って、人口が2/3くらいになってしまったんですね。でも経済規模が2/3になったかというとそうはならなかった。結局は人の価格、人件費が上がったんです。つまり、その経済規模を維持するための力が必要なわけです。生産性でカバーするのか、どこかから人を連れてきて補うのか、今、まさに日本がやろうとしているのはそういうことですよね。この流れが2000年くらいから始まったと仮定すれば、人件費の上昇はまだあと20~30年ほどは続くはずです。2040年くらいまでは有望ビジネスですね。そして人の価格が上がるということは、労働条件がよくなるということ。労働時間が短くなって、空いた時間、上がった給料をエンタメやスポーツに使うことになる。そう考えると我々のやっていることともつながってきますね。
うちの会社も中途採用を積極的に行なっていますが、私自身はどちらかというと新卒至上主義ですね。経験があると新しい発想が出てこないというデメリットもあるからです。例えば『バンドリ!』も、声優さんに楽器を弾かせてライブをするのがどれだけたいへんかが、わかってないから、出すことができた企画です。最初に楽曲を手掛けていただいてる上松範康さんに話したときは「正気ですか?」と言われましたからね。『レヴュースタァライト』も、はじめにネルケプランニングさんにお伝えしたときは、先に舞台をやって、それを原作にするという手法が理解できなかったそうです。そういった意味では、なまじ経験があったらやっぱりこれらの企画は出てこなかったとも言えます。
夏以降もブシロードはみなさんがアッと驚くような発想で生み出した、新たな企画をたくさん用意しています。ご期待ください!