コラム「木谷高明の視点」
第32回 「バンドリ!武道館公演の成功、そして陣頭指揮をとる為の社長退任」
2017年10月03日
社長の木谷です。おかげさまで「BanG Dream! 4th☆LIVE Miracle PARTY 2017! at 日本武道館」は大成功となりました。これまでずっと「目指せ、武道館!」を目標に掲げてきましたので、ついに達成できたという気持ちですね。個人的な感想は、ようやくここまで来たかという感じです。今回のステージはあれだけの曲数を演奏しつつ、アニメの内容もうまく再現できていたので、お客さんの満足度も高かったと思います。
武道館で感じたのは、お客さんの層が広がったこと。アプリゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!(以下、ガルパ)』が好調なこともあり、女性のお客さんが一気に増えました。夕方にアニメの再放送をすることで、小さいお子さんのファンの姿も目立ち始めています。今後は、さらに年齢層にも幅が出て来ると思います。
これからは海外に向けて動き出します。10月には台湾でアプリの配信も始まり、来春には英語版の『ガルパ』も計画しています。大規模な海外展開を予定しているので、世界にどれだけ浸透できるのか楽しみです。
『BanG Dream!』はバンドをコンセプトにした音楽コンテンツとして1つのジャンルを作ることに成功しました。その部分では、ある種のパイオニアになれたかなと思っています。今後は『BanG Dream!』プロジェクトを通して、ナンバーワン音楽コンテンツメーカーを目指していきたいと思っています。
日本でも英語版の販売をスタートした海外向けの新作トレーディングカードゲーム『Dragoborne -Rise to Supremacy-』では、この夏米国で200店舗をまわる大規模な講習会ツアーを開催しました。私もツアーに同行していくつかの店舗をまわり、いろいろと気付かされることがありました。
私たちメーカーの人間は、海外だと公式の地区大会などに顔を出す機会が多くあります。
そのため、大会に集まるユーザーと接する機会が多くなり、米国のTCGユーザーはトーナメント指向だと思いがちです。しかし今回、実際に街のショップへ行ってみると、その考えが間違っていることがわかりました。ライトユーザーが非常に多い。特に『カードファイト!! ヴァンガード(以下、ヴァンガード)』とか『ヴァイスシュヴァルツ』には日本と同じくらいカジュアルユーザーがいることを知りました。
やはり、現地のショップに実際に出向いて、自分で情報収集してみないとわかりませんね。
ショップの店長や関係者とも話をしたのですが、米国では多くの種類のTCGが発売しても、お客さんは最終的に『マジック:ザ・ギャザリング(以下、M:TG)』に行ってしまうと、みなさん仰います。『M:TG』にお客さんが集まる理由は、やっぱり〝スタンダード落ち〟があることが大きいようです。最初にこの範囲で買えばいいということがわかるし、これから始めようという人には、始めるタイミングを見計らうこともできます。とにかく新規が入りやすい環境が生まれるんです。
日本のTCGは、現状どれも新規は入りづらい状況です。国産のTCGでは〝スタンダード落ち〟はタブーという空気があるのも事実です。しかし、今回米国の市場を視察したことで〝スタンダード落ち〟の重要性を改めて認識しました。
国内のTCGに関しては、年末から来年にかけて、特に『ヴァンガード』に力を入れていく予定です。
現在、オンラインカードゲームが、100万人の初心者ユーザーを生み出しています。その新規層にアピールしたい。100万人の1/20がアナログTGCをプレイしてくれるだけでも5万人。あと、『ヴァンガード』をこれまで遊んだことのある約40万人のなかの、現在のプレイユーザー数である約10万人を引いた約30万人の中から20%の方に復帰してもらうだけでユーザー数が6万人、合計で11万人以上のユーザーが増えます。そういったユーザーを呼び込みたいと考えています。他社のTCGが新規に始めるのが難しいというジレンマに陥っている今が、最大のチャンスだと思って一気に仕掛ける予定です。
ここで、みなさんにお知らせがあります。
今後の展開に備えて、次の株主総会で私は社長を降りて、取締役になろうと思っています。私がコンテンツ作りのより最前線に立ちたいというのが理由です。ブシロードは、これからの3、4年が勝負の年だと考えています。コンテンツ開発の陣頭指揮を執りやすくするため、代表権を持たず、デジタルコンテンツ部の本部長と広報宣伝部の部長、ブシロードミュージック社長を兼任する予定です。
日本では、上の役職に就くと現場に携わってはいけないという風潮があります。ですが、私はそれが通用するのは既得権益を持っている会社だけだと思っています。
ブランドと版権と流通を確立している会社だけが、そんなことを言っていられる。それがない会社は役員クラスが現場に張り付かないと、とてもじゃないが正確な判断ができません。エンターテイメントの世界では、“現場を知らずして何を決定するんだ”と常に思っています。
しかし、企業として大きくなってくると、社長は現場を担当できなくなってしまいます。たとえば今、広報宣伝部は僕が直接指示を出しているわけですが、今後はあいだに役員を挟まなくてはいけなくなる。命令機構もわかってない人が間に挟まると、仕事がやりづらくなるわけです。調整に手間・時間・金をかけるのは本当に不必要ですからね。
もちろん、いつまでも僕を頼りにしていてはいけないとは思っているので、この3、4年のなかで少しずつバトンタッチしていきたいと考えています。
ブシロードグループでは、現在マーチャンダイジングに力を入れています。グループ内でノウハウの共有にも力を入れていく予定です。たとえば、グッズの物販はグループの中で新日本プロレスが一番ノウハウを持っています。現在、グッズの売り上げが年間12億円。グループ会社になった当初の売り上げは年間で1億9000万円ほどだったのが、5年半で6倍になっています。在庫は多くても6,000~7,000万円なので、それで12億円ということは年間で20回転以上している。回転率がいいのは、長年の経験により優れた在庫管理や販売管理ができているんだと思います。しかし、現在はそのノウハウを他のグループ会社で共有ができていない。誰に聞いていいのかもわからないし、そんな回転率だってことすら知らない社員も多い。そういった情報を共有するだけでもいろんなことが変わってくるはずです。
とにかく今、私にはやりたいこと、やらなければいけないことがたくさんあります。まさに「おれは社長をやめるぞ! ジョジョーーッ!!」って気分ですね。
来年はエンタメ事業のみならず、国内のカードゲームメーカーとしてもナンバーワンを目指すべく、みなさんがアッと驚くさまざまな仕掛けを用意しています。ご期待ください!