コラム「木谷高明の視点」

第28回 「新しいプロジェクトからブームを作る」

2016年12月13日

ブシロード社長の木谷です。

10月10日に新日本プロレス両国大会が開催されました。おかげさまでG1 CLIMAX(ジーワン・クライマックス)の決勝を除けば、2000年以降、両国国技館に最も多くのお客さんに来ていただいた大会になりました。9,671人というのはほぼ満員です。去年の両国大会よりもさらに1,400人ほど増えています。プロレス人気も本物になってきたと感じています。

今年は、年始に数名の選手がWWEに移籍したことで大きなダメージを受けたのですが、完全に盛り返すことができました。

それには2つの大きな理由があります。1つ目は新しい人気選手が多く出てきたことです。たった1年で新日本のリング上の風景は変わりました。2つ目は今年の春以降、芸能事務所のアミューズさんと提携したことです。これによって選手のメディア露出が格段に増えました。もちろん選手やスタッフの頑張りもありますが、この2つが特に大きいと感じています。来年1月4日に東京ドーム大会がありますが、これも去年、おととしよりも観客が増えると見込んでいます。また、来年はアメリカのマーケットも含めた海外展開を本格的にスタートさせます。まだ内容は言えませんが、国内においてももう一段ランクアップしたことを始めようと考えています。

今回の両国大会ではタイガーマスクWがついにデビューしました。現実のリングで実際の選手がタイガーマスクWのマスクをかぶって試合をしたわけです。当日、フェイスブックのタイガーマスクWの試合の動画のシェアが5,700以上で、「いいね」の数が2,000以上にのぼり、再生回数も約44万回を突破しました。他の試合と比べて、特に海外からの反響が大きかったです。

アニメも好評なので、アニメとリング上の動きをリンクさせながら、アニメファンをプロレスに呼び込んでいきたいと思っています。逆にプロレスファンがアニメを観てくれて、双方向の行き来が生まれればベストですね。

スポーツエンターテイメント部門では、新日本プロレスに加えて、先日、新たにキックボクシングのイベント「KNOCK OUT」を立ち上げました。12月5日に行われた旗揚げ戦は満員御礼となり、大盛況で終了しました。最高のスタートを切ることができて良かったです。次の「KNOCK OUT vol.1」は2月12日に開催しますので、楽しみにしておいてください。

プロレスは、力と力がぶつかり合う〝太マッチョ〟な世界。選手の動きもガツンガツンという力強いイメージです。逆にキックボクシングはしなやかで美しい〝細マッチョ〟な選手が沢山いる。これから更にその世界観を伝えることができれば、女子受けも期待できるのではないかと考えています。プロレスとはまた違った魅力を売りにできるコンテンツになると思います。

現在、キックボクシング界は中小の団体が横並びの状態ですから、頭1つ抜け出すことができれば、全部がそこに集まってくる。簡単ではありませんが、うまくいけば面白いことになるはずです。

今の世の中、あらゆる類のイベントが増加傾向にあって、外出する機会もすごく増えている。今年は映画界が特に調子がいいですよね。

映画はヒットが継続します。その理由は予告が本編とセットになっているからです。映画館に映画を観に行くと、おのずと次回予告も見ることになる。だから現在、ヒットのサイクルが生まれているともいえます。ですので、しばらくはいい状態が続くと見ています。

私は、これまで続いたアイドルブームはもう今年で終わったと感じています。2次元の『アイマス』や『ラブライブ!』など、強いコンテンツは残ると思いますが、3次元のほうは、どこかのグループの一人勝ちさえも難しい状況です。

握手をしてCDを販売する方法も、今ではオーソドックスなやり方になっていますが、最近はCDを買ったら握手だけじゃなくハグやデートまでが特典になっている。ヒエラルキーの上から下まで、全アイドルが変化形に走っている状況です。それはたぶんジャンル自体がもう飽和状態だということです。今後もしばらくはアニメやゲームでもアイドル系が出てくるでしょうが、いい結果は出ないと思います。

2017年は、アイドルに替わって2次元も3次元もバンドブームが来ると私は見ています。多くのプロダクションがすでに動きだしているという噂も耳にします。『BanG Dream!(バンドリ)』がその先駆者になれたらうれしいですね。

12月7日に『BanG Dream!』のアニメ制作発表会が行われました。同じ日に3rdシングル『走り始めたばかりのキミに / ティアドロップス』が発売になり、オリコンデイリーCDシングルランキング8位を記録しました。1月から始まるアニメに関しては、先日、シナリオを読みましたがかなりいい出来です。私はアニメのシナリオを読んで泣いたことはなかったのですが、スマホで2ndシングル『STAR BEAT!〜ホシノコドウ〜』を聴きながら読んだら、3回読んで3回とも泣きました。本作にはぜひご期待下さい。

そして、バンドブームのさらにその先には舞台、ミュージカルの時代が来ると睨んでいます。

先日発表させていただきましたが、ネルケプランニングとブシロードがタッグを組んだプロジェクトが始動します。舞台、ミュージカルが原作で、公演後にアニメを放送する。これまでのアニメで人気になった作品を舞台化するのとは真逆のやり方です。アニメでは舞台での演者がそのまま声優も担当する。メインどころの舞台役者と声優は完全に一致させます。しかも女性だけの舞台になる予定です。男性役も女性に演じてもらおうと思っています。

これまで私は、「3次元が先に浸透してしまうとキャラクターとの違和感が生まれる」と常々言ってきましたが、そこはすでにそうならない仕掛けを用意しています。舞台でコアユーザーを作り、アニメ・ゲームで広げていく、まったく新しいエンターテイメントになるので、こちらもご期待ください。

「東京ゲームショウ2016」では、スマホ向けデジタルカードゲーム『ラストグノウシア』と『戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED』の製作発表を行いました。『ラストグノウシア』に関しては、年内は微妙なのですが、冬のあいだにはリリースできる予定です。『戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED』も開発は順調です。来年の春にはみなさんの元へお届けできると思います。

『BanG Dream!』のスマートフォン向け新作ゲーム『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』も来年の春、アニメの放送期間中にリリースを予定しています。音楽リズムゲームに関しては、みなさんもう慣れてきているので、1度は遊んでくれるはず。そこからどれだけの人にヘビーユーザーになってもらえるのかがカギになると考えています。ぜひ、第二の『スクフェス』になってほしいですね。

既存タイトルでは『スクフェス』のアーケード筐体『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル ~after school ACTIVITY~』。新規では『ラストグノウシア』『戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED』、それに『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』。来年はこの4作をメインに突っ走ります。

話は変わりますが、今年も年末年始はMXテレビさんで長時間の特番を予定しています。そちらも楽しみにしておいてください。

10周年を迎える2017年はアナログもデジタルも足して、文字通り世界ナンバーワンのカードゲーム会社を目指します!