コラム「木谷高明の視点」

第27回 「チャレンジの1年が始まった」

2016年09月14日

ブシロード社長の木谷です。

7月が決算期のブシロードグループは、8月からが新しい期となりました。今期はチャレンジの年、来期は収穫の年と位置づけています。まず、今期はゲーム・アニメ・イベントなどをどんどん仕掛けていきます。それを来期の軌道に乗せる。そのうちの一部のプロジェクトは、9月15~18日(15日、16日はビジネスデイ)に行われる「東京ゲームショウ2016」で発表させていただく予定です。

来年、ブシロードは創立10周年を迎えます。5月6~7日にビッグサイトで開催する「大ヴァンガ祭×大バディ祭」では、これまでよりも会場も規模も大きくして、『ヴァンガード』『バディファイト』のみならず、10周年を記念して、他のカードゲーム、他のコンテンツを集めた巨大イベントを予定しています。今年は2万3千人の来場がありましたから、その倍の4万~5万人を目指したいと思っています。

春の感謝キャラバンも過去最大のものを計画中です。全国津々浦々のショップをまわりたいなと思っています。海外のイベントにも力を入れます。7月にはロサンゼルスで「大ヴァンガ祭×大バディ祭」を開催します。ほかにも、まだ発表できないことも含めて、10周年にあわせて今年の年末から様々な企画が動き出します。続報を楽しみにしていてください。

現状見えているところで特に力を入れているのは、来年から始まるアニメ『BanG Dream!(バンドリ)』ですね。夏から集中的に流しているCMで、すでにアニメや曲を知ってもらっている方も多いと思います。実はあのCMをあれだけ流したのには理由があるんです。サビだけでも聞いたことがあるような状態にしたいと思ったからです。8月27日の「Animelo Summer Live 2016 刻 -TOKI-」でバンドスタイルの声優ユニット・Poppin’Party(ポッピン パーティー)をお披露目しました。メンバー5人が揃って初めてのライブです。まず、そのお披露目の舞台で、お客さんが気持ちよくコールができるように曲を知ってる状態にしたかった。

CDの宣伝をしながら、実は「アニサマ」への準備とアニメタイトルの宣伝も兼ねていたというわけです。一粒で三度おいしいを目指したプロモーションを目指しました。

それから『BanG Dream!』は、キャラクターが全面に出た後に、声優とのリンクがしやすいようにできている。最近の作品は声優が表に出て来がちですが、やはりそれをするには2次元を先に浸透させなければいけない。先に2次元が出て3次元が出る分には「このキャラクターの声の人」となりますが、先に3次元が浸透してしまうと違和感が生まれる。いくら似せていても、キャラクターとのギャップが埋まらなくなるんです。販促は3次元で活動するしかない。CDお渡し会だって2次元ではできない。だからこそ、最初は2次元をドンドン露出するべきなんです。あくまで広がりやすいのは2次元ですから。

TCG の市場に目を移すと、2年前から予言していたことですが、アナログTCGは完全に上位寡占状態となりました。ブシロードTCGも負けないよう頑張っていきます。

特に新しい風が吹きそうなのが『ヴァイスシュヴァルツ』。8月の「しろくろフェス」で「Re:ゼロから始める異世界生活」と「STAR WARS」の新規タイトルの参戦発表がありました。先日発売になった「ご注文はうさぎですか??」も注目が集まっています。来年はさらに大型タイトルの参戦も予定しているので楽しみにしていてください。

国内ではオンラインTCGが盛り上がり始めました。当社もオンラインTCGのリリースを開始します。海外ではシンガポール発で7月にアナログの『Ascendants of Aetheros(アセンダント・オブ・エテロス)』という、必要なものが全て1セットで揃うスタンドアローン型カードゲームをテストケースとして販売しました。それに続く、コードネーム『ドラゴン』というカードゲームも来年夏リリース予定で進めています。こちらも英語版のみで展開予定です。そしてオンラインでは、海外向けのオリジナルタイトル『Cardfight!! Online』がいよいよ年末リリースとなりました。近い将来、オンラインTCGでも当社の存在を示したいと思います。

ブシロードグループでは、8月に4日連続で研修を実施しました。そのあいだに参加した150人程の社員を対象に私が面接を行いました。社員の考えはそれぞれ違います。今の仕事に満足していますっていう人もいれば、この部署に変えていただいて本当によかったですという人もいる。もちろん「私がなんでこうなんですか」って言ってくる人も少ないですがいる。話しているうちに感情が高まって泣いてしまう人もいます。感情的になって、すごい剣幕でまくし立てる人もいました。話していると、社員一人一人の気持ちや考えが見えてきます。

今回の面接で特に気づいたのは、グループ全体の結びつきが薄くなっていることです。ブシロードには多種多様な業務があります。これからはすべての結びつきを強くしていかないといけない。たとえばオンラインTCGは、アナログTCGの開発チームが培ってきた技術・ノウハウをもとに、オンラインのチームが製作を進めることで、はじめてブシロードの技術・ノウハウ・ブランドが活きてくるはず。アナログの開発チームの技術・ノウハウがつまったようなオンラインカードゲームをブシロードからリリースしたい。それにはまず、社内の結束が必要なんです。この「結びつき」が来年1月までのテーマですね。だから今期は人と人、部署と部署、会社と会社の結束をいかに強くするかをグループのテーマに、部署や制度を作ります。たとえば役職のある上層部の社員のみの研修をもっとやろうとも考えています。上司同士が親しくないと部下同士って仕事しづらいですからね。そうすると仕事の効率が格段に良くなってくるでしょう。

ブランドについての話が出ましたが、ちょうど先日、うれしい話を社員から聞きました。ライブの物販に早い時間から並び始めた人が多く出たので、整理券を渡して一度解散してもらい、後ほどまた来てもらうことになりました。そのとき、お客さんから「やっぱりさすがブシロードだな。手慣れてるよな」ってほめてくれている声が聞こえたそうです。その言葉はうちのイベントの物販のノウハウがブランドとして認められたということだと思うんです。ブシロードは2012年に「大ヴァンガ祭」と年末の「コミケ」の物販で、大混雑を起こし、お客様に大変ご迷惑をおかけ致しました。みなさんが愛想を尽かすほどの大きなミスをやらかしてしまった。当時のことは、今でも大変申し訳ないと思っております。でも人は、失敗があったから、次はどうしたらいいんだろう?って一生懸命に考えて技術を磨くわけです。その磨いた技術が組織で共有されて、それがノウハウになる。そのノウハウが共有されて蓄積される状態を続けていくと、お客さんにまで浸透して、いつかブランドになる。4年前の失敗の経験からスタートして、ようやくそれがブランドになったかなと思いました。 会社って人とか物とかお金とか除くと、技術とノウハウとブランドで成り立っているんです。常に新しいことをやりつつ、また新しい技術を磨く。でも技術は個人に身につくことが多いので、仮にその人がその部署からいなくなってしまったら、その人と共に移ってしまう。技術をノウハウとして組織で共有すれば、技術を持っている人がどこかへ移っても、組織に残る可能性が高い。さらにブランドとなれば中身や人が入れ替わっても確実に残ります。

ただそのブランドも新しいことにチャレンジしないと、古くなってさびていく可能性がある。常に新たな技術、ノウハウ、ブランドを生み出す努力を続けないとダメなんだと思います。

これからも技術を磨き、ノウハウとして共有し、ブシロードのブランド価値が高まるように頑張ります。10周年に向けてブシロードは結束し、さらに発展していきます!