コラム「木谷高明の視点」

第26回 「キーワードはデジタルとグローバル化」

2016年07月21日

ブシロード社長の木谷です。

ここ数か月、大きな政治のニュースが世界を騒がせています。

ちょっと前の話題になりますが、英国が国民投票の結果、EUからの離脱を表明しました。ブシロードもヨーロッパに現地法人を作るとき、英国に作るかドイツに作るかで悩みました。結局はコストが安いのとアナログゲームが盛んであるという理由からドイツに作ったんですが、英語圏である英国に拠点を置いている日本企業は思いのほか多いんです。自由貿易で広範囲の経済圏があるからと拠点を置いたのに、その国だけが抜けるというのはハシゴを外されたようなものでしょう。だからこれから相当な混乱があると思っています。

米国の大統領選では、不動産王ドナルド・トランプ氏が共和党の大統領候補になりました。トランプ氏に関しては、あの演説の仕方は非常にプロレス的です。彼は何度かWWEと絡んでいるんですが、そこで相手をこき下ろす大げさな話術を学んだんですね。一説にはトランプさんに一番献金しているのは、WWEのビンス・マクマホンっていう噂もあるくらいです。大統領になったら落ち着くみたいに言っている人がいますけど、私はそうは思わない。世界各国を相手に、今と同じ過激なことを言い始める可能性もあります。ブシロードは来年、英語版のみのカードゲームを発売すべく準備を進めていて、米国をメインに200か所のショップを回る横断サーキットをやろうと予定しています。なので大統領選の動向には注目しているのですが、困ったものですね。ちなみに彼は4回自己破産しているんです。それでも大統領候補になるんだからアメリカという国はやはりすごいなって思いますね。日本では考えられないことですから。

日本国内でも参院選と都知事選が続けて行なわれることで、随分と政治が話題になっていますが、やはり経済のことを考えてほしいと思います。アベノミクスは、うまくいっている部分もあるとは思うんですが、いわゆる「3番目の矢」といわれる規制緩和と、新産業の成長戦略が大幅に遅れている気がします。

先日、シャープを買収した台湾の鴻海(ホンハイ)もそうですが、結局強い企業って、オーナー企業、もしくはオーナーシップが確立している企業が多いんです。若干代替わりしているところもありますが、少なくともオーナーの精神が残っている。それが何代も続くと薄れてしまって、だんだんと“サラリーマン会社”になっていく。世の中全部がそういう会社になったら経済が弱くなってしまう。

もちろんインフラ産業的なものは〝サラリーマン会社〟でいいんですけど、新産業は次々出てこないといけない。さまざまな新産業が生まれて、オーナーシップを持った人が次々現れることが重要なんです。その辺は日本よりも米国のほうがダイナミックですよね。

東京オリンピックの行われる2020年以降、さらにグローバル化が進むはずです。今後は本格的に外で稼がないといけない。日本の企業は、2020年までに会社として準備ができているかどうかが鍵になりそうです。そこまでに取締役や執行役員の半数から3分の1は海外駐在じゃないとだめだと私は思っています。外国人の役員と女性の役員。エンタメ会社でこの2つがいないのはまずい。あと、役員の年齢も重要です。50代後半から60代しかいないところはアウトですね。30代40代50代60代とまんべんなくいたほうがいい。要するに、性別や人種を超えて、いろいろな年代から知恵をちゃんと集めている必要があるわけです。

今、日本のエンタメ産業では50歳から60歳の役員しかいない会社がたくさんあります。そんなことで新しいことにチャレンジできるはずがない。たとえば定年前の人生の第4コーナーに差し掛かっている人は知恵はある。だけどオーナーの意向に逆らえずイエスマンになってしまう。そういう人たちが直言するとは、私はとても思えない。でも30代の人は逆らえます。だってイヤになったなら他へ行けばいいって考えられる。そういう人が入っていないと新しい提案は出てこない。

ここ数年、ブシロードにも新しい中堅の人材が集まり始めています。私が直接誘ったりもしています。デジタルがわかる。なおかつ英語ができる。あとはコンテンツがわかっている。これからは、この3つのうち2つはできないといけないなと思っています。若手ならパッションが最重要ポイントですが。

8月からの新しい期は、ブシロードはイベントのブランド化に力を入れていくことになります。8月13日には第4回となる24時間カードゲームで遊べるイベント「しろくろフェス」をパシフィコ横浜で開催します。今年は24時間である必然性をもう1度楽しんでもらえる企画を考えています。

ご存じのように万単位の人々を集める「スクフェス感謝祭」はアプリから、「大ヴァンガ祭×大バディ祭」はカードゲームから派生したイベントです。現在もイベントの量がどんどん増えています。新しいアプリであったりカードゲームであったり、そこから派生した新しいイベントを首都圏で開催して、まずイベントをブランド化させることに力を入れます。その後、地方と海外に波及させたい。来年はロサンゼルスや大阪でも大型イベントを開催する予定です。

アプリやカードゲームのオフ会として機能するイベントを作り、そのイベントをブランド化させて大きくする。そして地方や海外に持っていきます。来期はさらに勝負していきますよ!