コラム「木谷高明の視点」

第25回 「私がシンガポールで串カツ屋さんを始めた訳」

2016年05月19日

ブシロード社長の木谷です。

このたびの熊本県熊本地方の大地震により被災された皆様に深くお見舞い申し上げます。ブシロードでも義援金の寄付やイベントでの募金箱の設置など微力ながら支援を行わせていただいております。一日も早いご復興と、皆様のご健康を心からお祈り申し上げます。

4月22日、ブシロードがシンガポールで日本食レストラン「あら川」をオープンしました。串カツを中心にお刺身、お寿司など本格的な日本食を楽しめます。これまで、飲食産業を敬遠していた私が、なぜレストランを始めようと思ったのか。今回はまずそちらをお伝えしようと思います。

ブシロードのシンガポール支社の入っているビルの一階に「HAN」という日本料理店がありました。串カツや大阪料理、寿司などのメニューのあるその店が閉店することになり、物件を売りに出していることを聞いたんです。それで私は非常に困った。なぜなら昼食の半分はそこで食べていたからです。このままでは行きつけの食堂がなくなってしまう! そんな動機から購入を検討しはじめました。しかしオープンを決定した理由は、私の昼食の問題だけではないんです。実はこの日本食レストランを皮切りに、今年、シンガポールで新しいビジネスを仕掛けます。

ビジネスとしてのカードゲームは、ジャンルは狭いですがエリアはワールドワイドです。私はシンガポールでカードゲームとは真逆の、ジャンルは広いけれどエリアが狭い土着したローカルビジネスを作りたいと思っています。今回の日本食レストランはその手始め。さらにこの夏には新たにアニメの「テーマカフェ」をオープンする予定です。こちらもすでに物件を押さえています。テーマカフェはショッピングセンターの中の映画館の前。この映画館が独立系の劇場なので、ここでアニメの劇場版を流したいと考えています。まず第1弾は『ミルキィホームズ』を考えています。それに深夜アニメ系の劇場配給も予定しています。1日に1回の上映になるかもしれませんが劇場に来たファンの方々は、そのテーマカフェで食事をしたりグッズを買える。すでに始めているグッズ販売とも結びつく。7月9日、10日の「C3 CharaExpo 2016」の開催に間に合うようにオープンする予定です。

日本食レストラン「あら川」はセントラルキッチンとしても機能させる予定です。ここで大量に作ったものを他の店舗に運んで売ります。人気のメニューがあれば、そこからさらに広げることもできる。仮に日本風のカレーがウケたらカレーのチェーン店を作ってもいいわけです。ここから現地の人々に認めてもらえる地域に密着したビジネスを成功させたいと思っています。

今回、海外で飲食事業を立ち上げてみて気づいたことがたくさんありました。レストランのオープン前に宣伝のために社員とともに街に出てチラシ配りを行いました。

これは宣伝もありますが店のオープンに向けて社内全体が協力し合う雰囲気を作るという目的もあったんです。次のオープン当日にはレストランを手伝うことになった。しかしある女性社員が店の中に入ろうとしない。私はやりたくないと拒否するんです。なぜかというと、まず、彼女はサービスを受ける側の教育しか受けていないからというのがひとつ。 それに、海外ではジョブ・ディスクリプションという職務内容を詳細に記した文書を作成するのが常識となっている。各自、私はこれをするために会社に入りましたっていうのがハッキリしているんです。だから、そういう仕事をするために会社に入ったわけじゃないとなるわけです。やってみれば楽しいと思うんですけどね。それが海外ではうまくいかない。私もやってるから、やろうよっていうのは通用しないんです。でもこの一丸となって何かを成し遂げるのは日本の企業のいいところだと思っています。

来年、米国で発売を予定している海外向け新作カードゲームの発売に合わせて米国のマーケットをメインにカードゲーム専門店で講習会をやろうと企画しています。私はもちろん、開発者たちも参加します。日本と同じように200店舗を回る。日本と違うから、車で長距離を移動するので相当大変だと思います。 海外のカードゲーム開発者はそんなことを絶対にしない。だって自分たちは開発の人間なのに、なんで店で一般のお客さんに教えないといけないのか? となるわけです。先ほどの社員と同じですね。店でお客さんに直接教えるのは別の人がやる仕事だと考える。抵抗があるんです。私たちはそこを抵抗なくできる。これが日本のいいところを活かすということだと思うんです。 そういった海外と日本との違いに気づくことができるので、来年米国のマーケットに打って出る巨大プロジェクトに向けた実験としても意味がある。私の昼食の問題だけではなく、そういった戦略も組み込んだ事業なんです。

今年のGWの「大ヴァンガ祭×大バディ祭2016」は昨年の来場者数を大きく上回り、2万人以上の方にご来場いただき、非常に盛り上がりました。 5月21日(土),22日(日)の「スクフェス感謝祭2016」もチケットの優先申し込みへの応募が昨年より多く来ているそうです。今年は来場者が5万人を突破しそうですね。

新日本プロレスも内藤選手を中心に最近異様な盛り上がりを見せています。私は悪者にされて迷惑していますが、あそこまでファンを本気にさせてしまったのですから、その点に関しては内藤選手はさすがだと言えます。昔からプロレスファンは会社批判や体制批判が大好きなんです。その対象にまさか自分がなるとは思っていませんでしたけどね。 今、日本全体が景気の不安や情報過多が重なってすごいストレスを起こしています。そう考えると、我を忘れて発散させる場として、ライブ的なエンターテインメントは常に需要があると思っていますし、まったく新しい楽しみ方が生まれて来ているような気がします。

先日、幕張イベントホールにて開催された『ライブ ミルキィホームズ 総天然色祭』では2曲だけですが、スマホとタブレットによる写真や動画の撮影を解禁しました。これは今年の1月に招待された海外アーティストのライブを観て気づいたんですが、海外のアーティストのライブでは撮影OKが当たり前なんですね。なかには全曲撮影OKな人もいるそうです。たしかに、昔だったら映像を売りたいという考えがあったんでしょうけど、今もなぜ規制されているのか、聞かれて答えられる人もいない。でしたらやってみようと、新しい試みとして始めてみました。

今年は日本で、そして世界で、新しいことに積極的にチャレンジしていきます。ご期待ください!