コラム「木谷高明の視点」

第17回 「グローバル化とデジタル化」

2015年01月05日

ブシロード社長の木谷です。2015年最初のコラムです。 

2014年を振り返れば、最大の変化は私自身がシンガポールをベースとした活動を始めたことです。経緯については過去のコラムで書いていますが、予想どおりに、前向きな変化を得られていることを実感します。また海外から見ると日本、そして日本のエンタメ業界は違ったように見えます。 
社員からは「日本にいるときよりもコミュニケーションが取りやすくなった」なんて言われています。必要なところはSkypeやメールでのやりとりで、だいたいは日本のスタッフに任せるという体制ができました。 

私自身が身軽になった分、市場分析をし、新企画を考える時間が増えています。

2014年のエンターテインメント市場は、大ヒット作品の出現はあったものの、全体的には厳しかったですね。消費税の増税を要因にあげる人が多いんですが、私はそれだけではないと思います。 
国内市場が停滞し、スマートフォンが完全に普及したことで、従来型のビジネスモデルに無理が出てきました。すでに兆候があった現実をつきつけられた形です。

グローバル化についても何度も提言してきているんですが、もっと具体的に断言しましょう。
今まで日本のエンターテインメント市場は2つの要因で世界的に有利でした。 

その2つとはコンテンツ作りで有利な条件である「大きな国内市場」と「歴史の長さ」が揃っていることです。「歴史の長さ」はコンテンツ作りの上での引き出しの多さです。この2つの条件で、日本のエンターテインメントは成長できましたし、世界にも受け入れられていきました。 

そして、現在新たに第3の要因が加わりました。インターネットとスマートフォンです。スマートフォンのアプリひとつで、いきなり世界的なヒット作品を生み出せる時代になりました。そしてそれは多くの場合英語が言語として使われています。 
日本はそこに出遅れていて、じわりじわりと不利な戦いを強いられています。面白いコンテンツを生み出せる素地の有利さは変わらないのに、グローバル市場に打って出る戦略が弱い。

書店が減って、本や雑誌が売れなくなっていますよね。 
アニメのDVDも売れなくなって、放送からパッケージ販売までがセットのビジネスモデルに陰りが見えています。 
どちらもスマホにユーザーの興味を奪われている面は否定できません。まずは、負けたことの自覚が必要です。
「面白いものは黙ってても売れる」は間違いです。

50年後に「本って、昔は紙にプリントしてあって、書店で買っていたらしいよ」「アニメはディスクに記録されていて、いちいちそれを再生したんだって」「どっちもネットでいつでも読んだり見たりできるのに、不便だったんだなぁ」「なぜオンライン上にあるものをわざわざパッケージ化していたのだろう?」……と言われている状態は、極端な予想ではありません。 

人間の社会は、具体的に想像できる未来に向かっていくものです。
メーカーは、その先取りをしなくてはいけません。

では、ブシロードとして、どう取り組んでいくのか? 

現在は、アナログのカードゲーム事業がコアビジネスになっています。 
アナログのカードゲームの英語版や、スマホ連動の企画で付加価値を高め、グローバル市場を開拓していきます。 
日本市場が縮小していることは事実ですが、現在よりもうちょっと落ちたところで、安定すると見ています。
参加メーカーや取り扱い店は、残念ながら今より減るかもしれません。
現在、好調なのがスマートフォン事業(ブシモ)です。成長率で見れば、本体のカードゲーム並に期待できる分野になりました。 

また、新日本プロレスのようなライブエンターテインメントは、言語があまり必要ではないので、グローバル化に強い。2週間強で会員1万人を突破した動画配信サービス「新日本プロレスワールド」も15%は海外からのお客様です。こちらも、大きな成長が見込める事業です。

ブシロードグループでも、アナログなカードゲームで基盤を安定させつつ、高い成長率のスマホとライブ事業に投資しています。
デジタル化が進めば必然的にグローバル化も進みます。来たる2015年はさらに急速に『エンタメ・デジタル・グローバル革命』が進むことになるでしょう。 
他のエンターテインメント会社に目を向ければ、KADOKAWAとドワンゴの経営統合が注目された一年でした。 
大手コンテンツホルダーがネットメディアの雄と組むことはわかりやすい補完関係です。

2015年、ブシロードグループも負けずに世界にエンターテインメントを届けてまいります。それがどのような形になるのか? ご注目ください。