コラム「木谷高明の視点」
第16回 「停滞を打ち破る変化、変革」
2014年10月30日
ブシロード社長の木谷です。シンガポール駐在ですが、10月4日の「ブシロード ワールドグランプリ2014」東京会場には参加することができました。
昨年より交通の便の良い会場を舞台として、4000人ものファンのみなさんに集まっていただけました。
『ヴァンガード』のイベントを東京で開催すると、だいたい2000人くらいに来ていただけるんです。でも、それを遥かに超える来場者数になるとは、予想以上でした。本当にありがとうございます。
発表の詳細については「ヴァンガード」公式サイトにも公開していますが、「アニメの新展開」「ゲームの新システム」「プロモーション」について説明、それぞれ反響をいただいています。
まずアニメについては、まだイラストしかない新主人公への反応がさまざまですね。というか、今のところは「髪型が変」くらいの声ばかり(笑)。動いてしゃべるまで評価はカラいのは当然です。アイチくんとは対照的に派手な印象なので、違和感はありますよね。
でも伊吹が新シリーズへの橋渡し役として、うまく動いてくれると思います。
新システムの「超越(ストライド)」は、要するにグレード4の登場です。加えてライド事故を防止する「Gアシストステップ」を導入します。
どちらも既存のデッキ、遊びかたを拡張するものですし、さらに楽しんでもらえるようになったと自負しています。
「プロモーション」については、具体的には4枚のPRカードの配布会を全国でやった、ということなんですけど、大きな視点では、昔遊んでいたファイターに『ヴァンガード』を思い出してほしいからなんですね。
アニメがひと段落すると、作品の勢いは落ち着くものなんです。でも『ヴァンガード』の場合、公式HPへのアクセス数は変わらず維持されていたし、9月の映画で従来のピーク以上に伸びたんです。
ということは、作品への関心は薄れていないんです。でもカードを買うとかプレイするとかまでつながっていない。だからわかりやすく、手に取れる形のプロモーションを行いました。
3つの試みは、すべて「継続しながらの変革」を意識しています。従来のファンの方が安心して、でも新鮮な気持ちで作品と向き合って遊んでもらえることが狙いです。
会場ではコミックを描いていただいている伊藤彰さんと、ゲームシステムを開発している遊宝洞の中村聡さんにもご登壇いただきました。私も含めた3人が揃うのは、実はレアなんです。変化、進化していく『ヴァンガード』の今後に向けて、全方位から真剣に取り組んでいますので、ご期待ください。もちろん、新シリーズをきっかけに新しくファンになっていただける方の心もつかんでいきますよ。
また、プロモーションも含めて九州の店舗様を集中的に回ることができたんですが、ここにも変革が必要だと実感しました。カードゲーム業界の流通については、このコラムでも何度か提言してきましたが、やはり店舗様と顔を突き合わせてお話しすると、具体的な変革点、変革が必要な点が浮かんできます。
まず、九州地区ってメーカー公式のサポートが薄いんです。大きな大会も少ないですし、そもそも二次問屋さんと取引されている店舗が多くて、流通的にもメーカーと距離があるなと感じました。
海外だと、問屋さんが担当地域を盛り上げるために、イベントを主催したりするんですよ。
メーカーとしてブシロードから企画や費用の一部を出すこともありますが、運営は問屋さんが主導です。北米、ヨーロッパ、アジアの地域でも多数のイベントが開催されています。日本から縁遠いところだとプエルトリコでイベントがありましたけど、200人集まりました。意外でしょ? これも店舗様や問屋さんがその地域を盛り上げてくれているからです。
でなければ海外でイベントなんて何度もできませんよ。
日本では、店舗様に商品を卸す取次に注力している問屋さんが多いですよね。だから、海外と違ってメーカーや店舗様へイベントや売場の提案をしてくれる問屋さんはあまり多くないんです。せっかく地域の商品の流れを把握できる立場にあって更に売上げを伸ばせるチャンスがあるのに、もったいないと思います。
流通のシステム面にしても、いまだにファックスが主流ですよね。電話で在庫を確認して電話かファックスで注文する。どうしてネットで在庫を見られるようにしないんでしょうか。そのほうが店舗様も問屋さんも効率よくなりますよね。
おそらく、従来のやりかたに慣れてしまっていて、
「そういうものだ」と思っているだけなのではないか? そう思います。
現状のやり方が悪いとはいいません。紙でやりとりするのはわかりやすいし確実な面もありますが、
やはりネットの方が効率的ですよね。
試験的にでも、ネットで在庫を公開して注文までできる問屋さんが現れたら注文、集まると思いますよ。
在庫があまりにもないと「品揃え悪いな」ってバレてしまいますけど。
というわけで、地域イベントや流通の面で、メーカーと店舗様の距離を効率よく縮めてくれる問屋さんが現れないかと、期待しています。ブシロードとしても重要課題として具体的に検討中です。
最後に改めてこれからのヴァンガードについて語らせて下さい。
現在(10月16日筆)のファンの反応はまだまだ不安が多いですが、アニメについては前作と比べて生活感、日常感をより多く描いていくので、前作とのキャラクターの性格の違いをお楽しみください。これまでに登場していたキャラクターもいつか登場します。ゲームでは、ストライドは一見難しそうに見えるが、かなりシンプルに作っているので、既存ユーザーは難なく、また新規ユーザーも入りやすい仕様にしています。これからはクラン一つに対するカード数を減らすと同時に全クラン共通のカードを増やします。これまであった様々な要望に応える形でヴァンガードを成長させていきます。
継続しつつの変革――それこそ今回の『ヴァンガード』のような――を試みてもいい時期だと思います。ヴァンガードは今年で4年目、先10年続く作品としたいです。なにとぞよろしくお願いします。
カードゲーム業界のみなさん、いかがですか?