コラム「木谷高明の視点」

第18回 「プロレス業界に倣う、足場固め」

2015年02月23日

ブシロード社長の木谷です。2015年は国際情勢が緊迫するスタートとなりました。

報道で浮かんでくる単発の事件や出来事の背景を見なければ、国家も個人も、国際関係に踊らされているだけなのかもしれません。

私の長男は、現在、シンガポールのインターナショナルスクールに通っています。

英語を母国語としないクラスで学んでいますので、世界中から集まったクラスメイトの国籍は様々。中には子供の間に国同士の関係を持ち込む生徒もいるようです。

領土や歴史など政治的な衝突があることを種に、「日本人だから」と、あからさまな嫌がらせを受けることもあると聞いています。 しかし、そんなとき、サウジアラビア人の生徒が「日本は好きだよ。だってゲームがたくさんあるもの!」とかばってくれたそうです。

うれしいですね。味方になってくれたことよりも、ゲームをきっかけに日本を好きになってくれた外国人がいることをうれしく思います。 このように日本のエンターテインメントの影響力は侮れません。 ブシロードを含め、世界にエンターテインメントを提供する企業は日本の良さ、強みも輸出していると自負して良いのではないでしょうか? 大きなことを言うようですが、日本の安全保障に貢献していると思います。

このことを常に頭に置き、今後もブシロードは、責任と自信をもってエンターテインメントを届けていくと改めて誓います。

少々お堅い話で始まりましたが、ブシロードグループとしての2015年は、1.4東京ドーム、 新日本プロレス「WRESTLE KINGDOM 9 in TOKYO DOME」の大成功で幕を開けました。 長年のプロレスファンに加え、この3年で新しくファンになってくれた方々、そして海外のファンにも熱い闘いを楽しんでいただけました。 女性ファンの中には、最後に泣き崩れたオカダ選手の姿に心打たれた方もいたのではないでしょうか。

多面的にプロレスの魅力をお届けできたと思っております。

プロレス人気が盛り返してきた背景には、ファンとのコミュニケーションを大切にする姿勢があります。

1.4のような大イベントでなくても、選手たちは大会スケジュールの合間に可能な限りメディアに露出し、イベントに参加をします。 最近はテレビや雑誌に取り上げられる機会も増えましたが、その前から地方のラジオ局や地方紙にも、積極的に出演してきました。

細かく、地道に、ファンに自分たちの存在と声を伝えていく。 一度、人気低迷のドン底を味わったプロレス業界は、選手も関係者も危機感を持って試合やプロモーションに取り組んでいます。 そうして新規のファンを呼び込みつつ、1.4の会場では偉大な歴史を築いてきたOBを敬い、長年のファンにも満足していただきました。

この姿勢には、カードゲーム業界も学ぶところが大きいんですね。

今のカードゲーム業界は「マジック・ザ・ギャザリング」や「遊戯王」という、長く続いたタイトルが好調です。 ブシロードでいえば、長く続いているタイトルは「ヴァンガード」や「ヴァイスシュヴァルツ」「ChaosTCG」。 「ヴァイスシュヴァルツ」と「ChaosTCG」はキャラクターゲームのブランドとして、多くのライセンサー様にご協力いただいています。 ブランドに安住しないよう、さらに進化させていきたいです。

「ヴァンガード」は4年をすぎて、正直、少し停滞しています。

こういうときは、とにかく現場にきけ!! まさしくプロレス業界に倣い、この春は講習会ツアーで47都道府県200か所、北は旭川から南は沖縄までの全国を回ることで、 お客様とコミュニケーションを深めつつ、次の一手の準備としたいです。 いろいろ企画はあるのですが、例えばレジェンドデッキとしてレンのデッキの復活は、ちょっと離れていたファンに復帰してもらうきっかけになるかも知れません。

これもプロレスと同じく、OBや先輩への敬意です。

ところで、ブシロードのプロモーションではTwitterやFacebookなどのSNSやニコニコ動画なども活用しています。 私は、SNSはいまや「いかに注目されるか」という意識の大きい発信競争の場になっていると思っています。 ついオーバーリアクションにもなりますし、大きなニュースや変化の話題にはどうしても反対意見がついて回る。 ツッコミを入れる方が楽に反響を得られますからね。 いろいろな意見から考えを構築できるのは良いことですが、企業としては、そういった声につぶさに対応していくのが難しい時代です。

そこで、ニコニコ動画で始まった「週刊ヴァンガ情報局」では、大きな話題をどーんと振る舞うのではなく、 小さくてもポジティブな話題を数多くお届けしようと思っています。 ド派手な話題で注目を集めるプロモーションも好きですし、当然仕掛けていきますが、 ヴァンガードのことをもっと深く知りたいファンとじっくり向き合うために、小さな情報発信を積み重ねる場所も必要と判断しました。

改めて地道に、コツコツ……というと、「ビッグマウスの木谷がトーンダウンしたのか!?」なんて思われるでしょうか?

いえいえ、そんなことはございません。新しくブシモから配信される「爆走兄弟レッツ&ゴー ミニ四駆ワールドランナー」 もありますし、新生活が始まる春に向けて様々な明るい企画を仕掛けておりますので、 今後も木谷とブシロードに、大いにご安心、ご期待ください!