コラム「木谷高明の視点」

第48回 2023年、日本は世界一の好景気になる

2022年12月30日

ご無沙汰しております。木谷です。久々にこのコラムで今後の展望とブシロードの取り組みについてお伝えします。

◆日本が好景気になる4つの理由

先日、Twitterで「2023年は日本が一番の好景気になる」とつぶやいたら、かなりの反響がありました。このことはIMF(国際通貨基金)の世界経済見通し でも示されているのですが、日本では「30年間成長していない」とか「賃金が一向に上がらない」といった話ばかりが強調されるので、若い世代の方は好景気と言われても実感が沸かないと思います。また、好景気になるといっても、その期間は向こう5~6年ほどと見ています。それ以上の長期的な話になると政治の問題も絡んでくるので、見通すことはできません。ただ、2020年代の日本が好景気になる基盤は整いつつあります。その理由は4つあります。

1つ目はインバウンドです。コロナ禍で一時は完全に消失したインバウンドですが、来春以降、相当な勢いで復活するでしょう。今年に入って大きく進んだ円安のおかげで、海外の人から見たらいまの日本はすべてが安い。日本全体が大バーゲンセール状態です。世界の人々が一番行ってみたいと思う国は日本です。すばらしい観光地と美味しい食べ物、歴史と伝統がある日本には、コロナ前を上回る大インバウンドがやって来るでしょう。今年は円安のデメリットが叫ばれた年でしたが、2023年は円安のメリットが本格的に享受できる年になると思います。すでに秋葉原や大阪の日本橋では、多くの外国人がカードショップに押し寄せ、シングルカードを買いあさっています。当社の『カードファイト!! ヴァンガード』や『ヴァイスシュヴァルツ』のシングルカードも動き出しています。

2つ目は、海外に散らばった製造業の国内回帰です。円安の進行や欧州の混乱、米中の対立などを背景に、世界で活躍する日本の有力企業が日本国内での工場建設を進めています。グローバル企業が工場を作るとなるとインパクトは絶大で、最低でも500億、多ければ2,000億~5,000億円規模の投資になります。これらが重なってくれば、設備投資需要に加え、日本の各地域に雇用が創出されます。地方の活性化は日本の課題ですから、日本全体にとって大変なプラスとなるでしょう。この流れはぜひ日本政府にも後押ししてほしいと思っています。海外にある子会社の利益を国内の親会社に戻そうとすると税金が発生しますが、たとえばこれを期間限定で無税にする。設備投資のための資金移動のみ無税でもいいかもしれません。とにかく国を挙げて製造業の国内回帰を推進すべきと考えます。

3つ目は、東京が国際都市へと変貌することです。これはちょっと説明が必要ですが、現象としては、東京の不動産価格が今後も上昇を続けることになると思います。なぜ東京が国際都市になるのか。これは香港や上海が、世界の金融センターとしての地位が低下しつつあるからです。さかのぼれば、2019年に香港で一連の騒動が起こって世界の企業が中国からの移転を考え始めたときに、日本政府は東京への誘致を行うべきでできた。それをやらなかったために、各企業はシンガポールに流れていきました。その結果、シンガポールは不動産価格と賃料が大幅に上昇し、高止まりしたままです。いま現在、欧米の企業が東アジア、東南アジアに拠点を置くとしたら、不動産価格・ビジネスインフラ・人件費の面からも選択肢は東京一択です。さらに来春からは在宅勤務の縮小に伴い、国内企業のオフィス需要も高まっていくでしょう。世界中からお金と人が、東京に集まって来るのです。また、東アジア有事の懸念から流れてくる人やお金も見逃せません。

4つ目は、コロナ禍の3年間で止まっていた事業の再開です。たとえば止まっていた道路工事、止まっていたマンションの修繕工事、止まっていた披露宴などなど。コロナを理由に止まって溜まり続けていた様々な事柄が、ようやく動き出す。ただこれは反動ですから、来年~再来年半ばくらいまでのことであり、中長期的な好況の要因にはなりえません。

これら4つの要因が重なり合って、2023年からしばらくの間は日本は成長しますし、日本人の賃金も上昇していきます。スペイン風邪の大流行を乗り越えた後の1920年代の米国が“黄金の20年代”と呼ばれる好景気に浴したように、2020年代の日本にも黄金の時代が到来します。とはいえその好景気も5~6年ほどの長くはない期間です。その間に、長期的な展望を基に、発展の土台を作り上げることができるかどうかでその後の日本の行く末が決まります。

◆好循環のカードゲーム業界

今年も好調に推移したカードゲーム業界全体ですが、2023年もさらに成長すると見ています。

人気タイトルが寡占している状況は変わらないものの、今年はバンダイさんの『ONE PIECEカードゲーム』や、当社の『Shadowverse EVOLVE』や『ヴァイスシュヴァルツブラウ』といった新作カードゲームがヒットしました。新作のヒットはこれまでカードゲームに触ったことがない人をカードゲームの世界に連れてきてくれます。継続的にヒットしている『ポケモンカードゲーム』も、多くのポケモンファンをカードゲームの世界に引き込んでくれています。

カードゲームショップの数もどんどん増えています。当社の公認大会の申請件数を見ても、毎月20軒ずつ増えている印象です。大会を開催する意志のあるお店だけでこの増え方ですから、単にカードを扱うお店だけならもっと増えているでしょう。カードゲームショップが増えれば、そこで働く人も増えます。カードゲームショップの店員さんはカードゲームを人に勧めてくれますから、カードゲームを遊ぶ人がどんどん増えていく。そして増えたユーザーはまたユーザーを呼び込んでくれる。いい循環ができていると思います。

この流れをより力強く拡大していけるように、当社でも様々な工夫をしています。カードゲームには多面的な魅力があり、ユーザーが求めるものも様々です。当社のカードには、プレイヤーが喜ぶ強さ、コレクターが喜ぶ希少性、そしてアニメファンが喜ぶグッズとしての完成度、それぞれの魅力を満遍なく詰め込むように努力しています。

いわゆるサブカル系の中で、お店の数が増えているのはカードゲームだけではないでしょうか。新作カードゲームの成功とインバウンド、そしてお店も増えているいい流れの中にあるカードゲーム業界は、まだ2~3年は成長が続くと見ています。来年~再来年が一番の盛り上がりを見せるのではないでしょうか。

◆ブシロード2023年の取り組み

こうした比較的明るい見通しを前にして、さてブシロードはどうするか。総論としては、グローバル化をよりいっそう推進していきます。来る2024年度の新卒採用では、求める人材像について、いくつかある項目のひとつとして“英語ができること”とはっきりと書きました。外国人の雇用にもさらに力を入れ、外国人の幹部への登用も進めていきます。

来年の3月からは、アジア各国で当社のカードゲームの内覧会を開催します。内覧会は金曜と土曜の2日間で開催し、金曜日はショップや問屋、メディアを呼んで当社製品のプレゼンをしつつ、土曜はユーザーも招いて実際に製品を体験してもらうという内容です。来年発売予定の『Shadowverse EVOLVE』の英語版については、シンガポール、米国、日本のブシロードスタッフ合同で全世界300店舗で講習会を実施したいと考えております。海外でもこれだけの規模で講習会を開こうとしている企業はブシロードだけではないでしょうか。

インバウンド対応も強化します。4月29日(土)~30日(日)に開催する ブシロードカードゲーム祭2023 は、英語と中国語でもWEBサイトを公開しています。会場での案内看板なども英語と中国語を併記して、海外のお客様も楽しめるイベントに進化させます。

これからは真にグローバルな企業でないと成長は望めないでしょう。エンタメ企業も例外ではありません。むしろエンタメ企業こそグローバルでなければならないと考えています。

もちろん国内のファンに向けてもどんどん話題を提供していきます。2023年の皮切りは、プロレスファンの方が待ちに待った1月4日(水)の WRESTLE KINGDOM 17 in 東京ドーム です。おかげさまで前売券の売れ行きも上々。アントニオ猪木さん追悼大会として、世界中から注目を集める大会です。

1月9日(月・祝)には、ブシロード新春大発表会 2023 を開催します。2,000人収容のTOKYO DOME CITY HALLを会場に、カードゲームやプロレス、ゲーム、アニメについての新情報を発表し、最後はライブまで行うという大発表会です。長時間の催しになりますが、発表の模様はYouTubeチャンネルで配信しますのでぜひご覧ください。特に『ヴァイスシュヴァルツ』と『ヴァイスシュヴァルツブラウ』については、合計10タイトル以上の参戦を発表します。いずれも強力なタイトルばかりですので、ご期待ください。

2023年は、ブシロードは強めにいきます。何もかも強めに、日本が好景気になるであろう大きな流れに乗っていきたいと思っています。当社のような会社が増えたら本当に好景気になるだろうなと思いますし、そう思わせるような活動をしていきます。

日本のリスタートはすでに始まっています。最後に残っているのは、我々日本人の気持ちの部分です。条件は整いました。2023年、リアルなマスクと心のマスクを両方外して、がんばりましょう!

2023年も、ブシロードグループをよろしくお願いします。