コラム「木谷高明の視点」

第21回 「デジタルとアナログの狭間で考える」

2015年07月01日

ブシロード社長の木谷です。

まず先月に開催したシンガポールでの「CharaExpo 2015」ですが、たくさんの来場者と出展者のご協力で盛況なイベントにできました。ありがとうございます。日本の会社が海外でコンテンツ系イベントを主催して成功させた事例は前代未聞で、非常に有意義だと思っています。

「Anime Expo」も「Japan Expo」もユーザー主体のイベントとして始まって、盛り上がってから企業が参加する流れでしたから、最初から企業主催のイベントはあまり例がありません。勢いに乗って、来年に第2回をやる意欲もわいてきました。コンテンツとマーケティングの会社を結ぶBtoBのイベントにも繋げていきたいですね。

また、先日の「スクフェス感謝祭2015」は初のリアルイベントでしたが、予想をはるかに上回る盛況ぶりでした。
物販も大行列でお待たせしてしまいましたが、朝から記念グッズ目当てに殺気だつようなことにはならず、ファンの方がフラッと会場に来て、ラブライブ!やスクフェスの世界に触れて、何かグッズを手にして帰る。和やかなイベントだったこともうれしいです。

しかも、土日の開催で日曜日のほうが来場者数が多かったんですね。これは土曜日に来た方がネットで話題を拡散した流れだと思います。メンバーの等身大パネルと 記念撮影した写真をTwitterでたくさん見ましたし、それを見たファンの方が「無料だし面白そう」と足を運んでいただけたんだと思います。

全国大会もネット中継で8万人以上の方が観戦されていましたし、普段、ネットで熱い思いを高めているファンのみなさんの愛が、会場で爆発していたのではないでしょうか。

以前から、ヴァンガードには「大ヴァンガ祭」、ヴァイスシュヴァルツには「しろくろフェス」があります。
ミルキィホームズはライブがありますし、新日本プロレスリングはもちろん試合の興行があります。

ブシロードの主力コンテンツには、定例イベントがセットになっています。
グループの業績で見ても、グッズと音楽とラジオ、イベントをやっているブシロードミュージックが好調ですね。
この2年間、スマホ、オンライン事業にも力を入れてきて、ブシロードの原点であるアナログ事業と歯車ががっちり合うようになりました。

デジタルの世界では、コンテンツの単価は下がる一方です。
「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」にしても、多くのユーザーは無料で楽しんでいる。それでもいいんです。売り上げがどうこうではなく、月間で数百万人もの人が楽しんでいることが強固な土台になりますから。

デジタルで広く熱く練り上げた作品愛を、イベントやグッズなどのアナログにぶつけてもらうことができれば、メーカーにもファンにもいいことじゃないですか。劇場作品も、映画館に行くというアナログの商品に転化させているわけです。

デジタルからアナログへユーザーを導いていくノウハウが、今後、重要になってくるでしょう。

たとえば、今、「刀剣乱舞-ONLINE-」が流行っていますよね。
多くのユーザーが無料で楽しんで、実物の刀剣を見るために歴史資料館や博物館に足を運んでいる。歴史専門誌でも刀剣特集が組まれて、刀剣のビジュアルムックも多く出版されています。デジタルの熱気がアナログの行動、消費に転化されているわけです。

博物館や出版社がブームに乗っているわけですが、そこにメーカーとしてどう参画したらビジネスになるのか? 課金ユーザーを増やす以外にも、企画できる余地があるはずです。コンテンツ業界の方は、思考実験してみてはいかがでしょうか?

SNS時代は、ユーザー人気が一カ所に集中しやすくもあります。みんなで話題を共有しやすい時代だからですね。大きな光に全員が集まってくる。大ヒットは生まれやすいですが、中堅どころが苦しくなる時代です。
デジタルとアナログの特性を理解して、ユーザーの愛、ニーズを橋渡しする企画力がなければ、老舗の大看板には勝てっこありません。

7月9日に「ブシロードTCG内覧会」を開催します。それぞれのカードゲームで発表会やイベントを開催していますが、ブシロードTCGとして横断的にタイトルを知ってもらうためのイベントです。

内覧会にあわせて、業界向けにセミナーも開催します。非公認大会の開催方法や、カードゲーム以外の子供向けホビーの流行らせ方、ネットや動画を使ったゲームや店舗を盛り上げ方など、カードゲームに限らないノウハウを伝授します。今回にお話ししたデジタルとアナログを繋ぐビジネスノウハウにも役立つセミナーですので、ぜひ、お越しください。

業界向けの内覧会ですが、一般開放の時間帯もありますし、ニコニコ生放送での会場中継もあります。ユーザーのみなさんも新しい情報やTCGとの出会いを楽しみにしていてくださいね。

ブシロードは、これからもエンターテインメントの現場の最前線に立ち続けます!