コラム「木谷高明の視点」
第14回 「シンガポールで“確変”スタート!」
2014年08月08日
ブシロード社長の木谷です。
みなさんがこれを読んでいるころ、私はシンガポールの地を踏んでいます。これから、シンガポール在住の日本人としての仕事と生活が始まります。
シンガポールに行くことは、これまでこのコラムでも、他の場所でも宣言してきました。
では、なぜシンガポールに行くのか? 社長が日本を離れて大丈夫なのか?
実は、繰り返し聞かれてきたこの2つの問いの答えは、つながっています。
簡単に言うと、「あえて環境を変えることで、自分にもブシロードにも強制的に変化をもたらすこと」が目的です。
改めて、その理由を語りたいと思います。私が日本にいると、色々な案件に関して、どうしても私が判断を下すことが多くなります。トップダウンの迅速な経営は強みでもありますが、迷った時の答えも、課題の解決策も、新しい企画も、すべて私が考えていては、社員が何事も自発的に考えなくなってしまいます。
私はカードゲームやエンタメの業界で20年やってきていますから、私が直接話をすることで、業界に色々と融通を利かせやすいケースも多々あります。でも、そうだからといって、私がいつも先頭に立っていては、社員の自発性が育っていかないと思うんですよね。
また逆に、私が基準になることで会社全体の足を引っ張ることもあります。
社内文書の電子化なんかはその最たるもので、私のITリテラシーが低いがために社内で紙の書類を回す時間がかかっています。
私が学生の頃は、まだコピー機がやっと出始めた時代です。それまでは講義のノートは手書きで写させてもらうというのが当たり前でしたから、自身では事務作業のIT化の必要性をあまり強く感じることがなかったんです。ほかの会社でも、上の人ほどそういった事務処理などを自分でされることが少ないですから、事務的な手続きのアップデートが進まないという例を見聞きします。
私が日本を離れることで、現場にとって適切なスキームが自然に組まれていけばいいなと思っています。問題があれば、稟議書だけは紙に戻すとか、重要な案件は必ず顔を突き合わせて話すとか、再調整すればいいですからね。
ルールを決めて、思い切って権限委譲する。どこまで任せられるかは、やってみないとわかりません。月に一度は日本に帰って来ますので、とんでもなく無責任な海外赴任ではありませんしね。シンガポールまで「これ、どうしましょう?」っていつまでも細かい相談が舞い込むようではダメです。遠くから数字や結果を見守って、上手くいっていることがわかれば成功。
私が日本を離れることで、今まで以上に自分で動き出す社員もいると思います。
純粋に「面白そうだ」と思うことを企画にして、「もっと面白くするには?」「こうしたら盛り上がる」「利益も出る」と転がしていって、「できるのか?」「リスクはないか?」という懸念を前向きに潰していけるような社員が現れるでしょう。
明るくて周りを巻きこめる資質を持っている、または秘めている社員が、プロデューサーとして覚醒していくことを期待しています。プロデューサーという立場は、育ててなるものではないんですね。資質を持った人がプロデューサーとして目覚めるんだと思います。
プロデューサーは誰かの育成によってではなく、自らの覚醒によって生まれるんです。
私自身も、シンガポールを拠点にすることで強制的に変化や刺激にさらさわれるわけです。
環境を変えることで思いつくこともあるでしょう。
例えば、たった数回の海外訪問の中でも、製品のパッケージの中にチラシを入れて自社の広告媒体として使おうとか、成行きで複数同じような内容のものがあったツイッターアカウントを統合しようとか、色々なアイデアが出てきたのです。
そして弊社にとって初めての海外現地法人である、シンガポール法人の立ち上げから3年たった今、
今後の課題も見えてきました。
「行って何をすればいいのか?」という後ろ向きの懸念はありません。
「行けば何か浮かぶし、やることもわかる」と前向きに考えています。
「いつまでに何をどうする」という目標は、とりあえず立てていません。
きっと想像以上のこと、予想もしなかったことが起こるはずですから。
海外向け新事業として、ヴァンガードの新施策も必要だと思っていますが、それだけではありません。
環境を変えて、刺激にさらされることで、人間も会社も変わります。
パチンコでいう「確変」に入るわけです。当たるかどうかなんて、人生の先のことはわかりません。ただ、当たる確率を上げたい。
日本のカードゲーム市場にも変化のための刺激が必要です。実はその種はすでに撒いてあったりするのですが、今はまだ詳しくはお話しできませんので、追々ご紹介ができればと思っています。
シンガポールに行って、何をするか。自分でもわからない部分が多くて、そこが楽しみです。
もちろん、日本のイベントにも顔を出しますし、このコラムでも引き続き、メッセージを発信していきます。それでも、日本の社員に「帰ってこなくてもいいです」「いなくても順調にやっています」と言わるようになればうれしいですね。
そうなったら、また新しいことを始めるチャンスやパワーにつながりますから。
話はかわりますが、本日、ブシロードの公式ホームページをリニューアルしました。
色々な変化を経て、ますますパワーアップしていきたいと思っておりますので
木谷ならびにブシロードを今後ともご支援、ご指導のほど、何卒宜しくお願いいたします。