コラム「木谷高明の視点」

第47回 逆境をプラスに変えて

2022年01月24日

※今回の記事は、カードゲーマーvol.54(2020年9月発売)に掲載のコラムに編集を加えたものとなります。

 木谷です。8月21、22、23日の3日間、富士急ハイランド・コニファーフォレストで「BanG Dream! 8th☆LIVE」夏の野外3DAYSが開催されました。新型コロナウイルス対策の規制もあって、多くのライブが中止や延期を余儀なくされている最中でしたが試行錯誤の末、イベント開催に踏み切りました。結果、動員は3日間で約1万2500人。ライブ・ビューイングでは海外含めて約2万3500人。延べ約3万6000人の方々に観ていただくことができました。
現場では、検温、消毒、マスク着用、ビニールカーテン、分散入場、さらにライブ中の発声や銀テープの投げ入れも禁止にするなど、蔓延防止対策を徹底し、ファンの方々にご協力いただきました。開催から2週間が経っても感染者やクラスター発生の報告はなく、無事に終わったことに安堵しています。

 開催前は不安視する声も多く、『本当にやるんですか?』『正気ですか?』といったメールが届いたこともありました。批判は承知の上でしたが、やはり初日は現場に緊張感が漂っているのを感じていました。流れが変わったのは初日が終わったタイミング。観てくれたお客さんがSNSなどで絶賛してくれたことで『本当に開催したんだ』『大丈夫なんだ』『やっぱり行きたいな』という話題が広がっていくのを感じました。そこから一気に評価が変わっていきました。

 3日目の23日のラストには夜空に花火が上がったのですが、お客さんは声を出せない中、サイリウムの光は揺れ続けている。あの光景を見て音楽ライブは客席にお客さんがいてこそはじめて完成するのだと改めて感じました。

 9月3日からは舞台「アサルトリリィ The Fateful Gift」 の公演も行なわれています。こちらも初回公演の冒頭30分を無料配信にしたことも大きな話題になりました。現地での観劇も可能ですが、全公演が有料配信されています。舞台はこの数か月の間でも、出演者に感染者が出て中止となった公演がいくつかありました。やはり、舞台稽古は大人数が集まることが多いので密になりやすい。

 今回の舞台では出演者25人をグループに分けて別々に練習するという方法をとりました。本番直前まで全員で稽古を行なうことを控えて、合わせるのは最後の最後。舞台の練習方法としてはとてもうまくいきましたが、そうするためには稽古用のスタジオを分けて借りなければいけない。経費面での出費がかさむことになりました。そのあたりをどう折り合いをつけるのかが今後の課題となります。

 東京ゲームショウの通常開催が中止になったこともあり、何か面白いことができないか考えて、9月19日~30日にかけてオンラインイベント「ブシロードゲーム祭り」を開催しました。これだけゲームアプリが増えてきて、カードゲームもあるわけですから、すべてを全部1つの枠に入れてイベントをやってみることにしました。

 オンラインで連日豪華なゲストが参加するYouTube配信を行ないつつ、オフラインでもグッズ販売や展示などを実施しました。9割がオンラインですが、1割をリアルな会場やショップと連携して開催しました。常時動いているアプリやカードゲームが10タイトル以上あるからこそできた企画です。

 8月21日~23日までの3日間、「BanG Dream! 8th☆LIVE」夏の野外3DAYSの公演を1日1公演ずつ、期間限定で有料配信しました。今回の配信では開始時間を決めて、途中から観た人はあえて頭から観ることができなくするという方法を試してみました。同じ時間に同じものを観て共有することでの臨場感が出る。結果、視聴者が同時に同じ映像を観るライブ・ビューイングのようなリアルタイム感を生み出せました。今後もオンラインでライブの一体感を楽しめる方法を模索していきます。

 私が生涯のベストスコアを狙っているIP「D4DJ」のゲームアプリ『D4DJ Groovy Mix』 が10月25日に配信を開始します。2017年の秋に次はDJだと思い立って3年。ようやくリリースとなります。とにかくスタッフ含めて、思いつく限りのことをこのプロジェクトに盛り込みました。リリース時に曲がいきなり120曲ほど収録されていますが、リリース後も10日間毎日新曲が追加されていきます。毎週ではなく毎日というのがポイントです。

 同アプリのウリの1つがカバー曲です。20代から30代のゲームファン、アニメファンに確実に刺さる曲、15年ほど前のヒット曲を中心に、様々な世代に向けたカバー曲を提供していきます。お客さんのコア層は10代~30代になるとは思いますが、40代、50代の人まで楽しめるようなゲームにしたいと考えています。誰でも耳なじみのあるカバー曲も多く取りそろえているので、すべての世代の方に楽しんでほしいですね。 

 8月26日の「ブシロードグループDX(デジタルトランスフォーメーション)発表会」で、フルボイス入りの電子書籍のリリースやバーチャルタレント事務所「いろどり芸能郵便社」を立ち上げなどデジタル関連の発表を行ないました。

 VTuberに関しては、私自身は当初、反対していたのですが、ブシロードクリエイティブ社長の成田のすすめでゴーサインを出しました。今は自分があれこれ言うことではないなと思って静観しています。僕はVTuberの良さがわからなかったのですが、『Reバース for you』の『ホロライブプロダクション』が好調なことで、もっと理解するように努めるべきだと思いました。あと私の反対を押し切ってでも社内の人が何かを生み出してくれるのは嬉しく思っています。今のブシロードのIPは私きっかけで生まれたものばかりです。私以外から面白いものが生まれてほしい。社員にはどんどん新しいことに挑戦してほしいと考えています。

 カードゲームでは『Reバース for you』の「ホロライブプロダクション」シリーズ、『ヴァイスシュヴァルツ』の「五等分の花嫁」が共に絶好調です。『ヴァイスシュヴァルツ』は12年間やってきて、初回の売上が一番よかったのは「艦これ」だったのですが、「五等分の花嫁」はそれを抜いて過去最高ですね。今もトライアルデッキを5種類出しているんですが、すべてがメーカー完売になっています。『ヴァンガード』に関しても上向きになってきました。日本選手権は店舗で開催したことで通常の公認大会よりも参加者が倍近く増えました。コロナ禍でもそうなのだから、通常であればもっと行きそうですね。下がってしまった当社のシェアを周辺環境を整えて、なんとか再度盛り上げていきます。

 コロナがあったからこそ生まれたアイデアがいくつもあります。逆境だと思えることも、ブシロードはすべてプラスに変えていきます。立ち止まらず新しいことに挑戦していきますので、ご期待ください!