コラム「木谷高明の視点」

第13回 「完結、継承、新生」

2014年06月30日

ブシロード社長の木谷です。昨年に続いて「しろくろフェス」、開催します! 24時間イベントなんて無茶だと社内からも言われましたが、いざやってみると色々おもしろい工夫もできましたし、お客さんにも楽しんでもらえて盛り上がりましたから、2回目をやらないわけにはいきません。

9月には『モンスター・コレクション』の合宿イベントも開催します。『Chaos TCG』や『ヴィクトリースパーク』のユーザーさんも参加できますので、ぜひお越しください。

特に今年は、私自身も参加して、『ヴィクトリースパーク』のファンの方と交流や対戦をしたいです。

その理由は、もう発表していますが、『ヴィクトリースパーク』のリリースを次の『熱風海陸ブシロード』のエクストラブースターをもって終了するからです。サポートは2016年8月まで継続しますが、新商品のリリースは次が最後となります。

改めまして、6年以上にわたって楽しんでいただきまして、ありがとうございました。

先に、角川さんから引き継いだ『モンスター・コレクション』もブシロードからのリリースは終了するとお知らせしていますが、こちらは角川さんと、開発会社のグループSNEさんにお返しする形です。

2つのタイトルで終了(『モンスター・コレクション』はブシロードでの取り扱いを終了)を発表しましたが、『モンスター・コレクション』は実はお店での動きが過去最高によくなっていますし、『ヴィクトリースパーク』についても混乱や問い合わせは少なく、落ち着いた反応です。ブシロードとしても、仕入れるか仕入れないかはお任せします。でもうちはこの時期まで面倒見ますと宣言したことで、安心していただけていることを実感します。

過去のカードゲームでは、なんとなく終わるものが多かったですよね。しばらく新商品が出ない時期が続いて、お客さんから問い合わせがあっても「検討中です」と保留して、最後に30種類くらいのが出て終わりとか、結局出ずに消えるとか。その間、大会だけはズルズルと細々と続き、サポート終了までの流れが発表された例はないと思います。でもちゃんと告知をして幕を引くのが、メーカーとしての責任でしょう。

スマートフォンのゲームはもっとドライに、いつまでにサービスを終了しますと発表して、あっさりと店じまいしていきますよね。でもアナログのカードゲームはカードという実体がありますし、ファンの思い入れを考えるとバッサリいくわけにはいきません。だから、最終リリースから大きめのイベント開催、サポート終了までのロードマップを示すべきだと考えたんです。

『ヴィクトリースパーク』は、前身の『サンデーVSマガジン トレーディングカードゲーム(以下:サンマガ)』から基本システムを受け継いで、2008年に誕生しました。

『サンマガ』は、ブシロードを創業したばかりのころに小学館さんにご挨拶に行ったら、ちょうど「週刊少年サンデー」と講談社さんの「週刊少年マガジン」で50周年の企画が動き出したころだったんですね。その場で「カードゲームをやりませんか」という話になったんです。

創業当時は30坪の事務所に社員4人で、まだ何もやっていない段階ですよ。そんな会社に大手出版社が大看板2枚を預けてくれるなんて、男気を感じましたね。僕自身も、少年時代に読んでいた作品とこういう形で出会えるなんて感激でした。

『サンマガ』は、プレイヤーとしてももっともやりこんだタイトルです。東京の地区大会で優勝したこともあるんですよ。全国大会では1勝もできませんでしたけどね。秋葉原の土を持って帰ろうとしたら、どこも舗装されていて掘れなかった(笑)。

すべてがキャラクターのカードという発想は『サンマガ』ならではのものです。でも漫画原作なので、カラー原画が少なくて困ったこともあります。描き下ろしイラストを発注するわけにもいかないし、デジタル彩色でやりくりした事も懐かしいです。

『ヴァイスシュヴァルツ』も、PCゲームはともかく、アニメの画質が良くなるまでは絵素材のクオリティに四苦八苦しましたね。でも『ヴァイスシュヴァルツ』では横位置のカードを取り入れて作品の場面をまるごと取り込むなど、『サンマガ』からの変化を意識しています。

『ヴィクトリースパーク』は『サンマガ』を継承したことで、シンプルながら制約のあるシステムで展開してきました。

『カードファイト!! ヴァンガード』もすべてユニットカードですが、これは明らかに『サンマガ』『ヴィクトリースパーク』のアイデアを受け継いだものです。そしてユニットのカードにキャラクターのカード、横位置のカードなど、『ヴァイスシュヴァルツ』のシステムをさらに発展させたのが『フューチャーカード バディファイト』です。

こう並べて見ると、系譜が見えてきますね。

さて、終わるものばかりではありません。新しい人材を迎えて新事業の仕込みもしています。アナログのカードゲームに限らず、多様なエンタテインメントに対応できるように、開発力を強化していきます。

さしあたっては、ネット対応のアナログホビーに視野を向けています。ネット対応のコンテンツだと、いきなり世界に売り込めるところが強い。大手が手広くメディアミックスして大きなコンテンツに育てて世界に発信するビジネスも強いですけど、それは自国のマーケットで育てる余裕がある場合に限りますよね。

弊社が提供しているスマートフォンゲームプラットフォームのブシモでいうと、『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』が海外だけで100万ダウンロードにも達していて、ユーザー数も右肩上がりです。

また、『Magic : the Gathering』のオンライン版である「Magic Online」が成功しているように、ネットやスマホ向けのコンテンツはアナログのホビーと共存できますし、アナログを引っ張る力もある。もちろん『Magic : the Gathering』のように世界的に支持されているタイトルであることが大前提ですが。

ブシロードが、全世界に向けてネット対応ホビーを始める……仮定として、ですよ。その場合は、全世界に広がっているカードゲームが先陣を切るでしょう。

まだ秘密のことが多すぎるので、後の発表をお待ちください。

8月には、私はシンガポール法人に移ります。ブシロード自体の拠点が移るというより、私だけ転勤するような形です。現地で「英語もできない、使えないヤツが来た」と言われないか、ドキドキしています(笑)。

世界への足場となる新しい土地で、新しい企画を生み出します! ご期待ください!