コラム「木谷高明の視点」

第11回 「"普通”になったカードゲーム市場」

2014年04月11日

ブシロード社長の木谷です。消費税増税で小売りの現場にはまだ混乱が見られますが、弊社から3月末に発売した『ヴァイスシュヴァルツ』のブースターパック『艦隊これくしょん -艦これ-』がおかげさまで絶好調です!最初に5500カートンも用意していたので在庫の不安があったんですが、すでに再出荷の配分を検討する段階。店頭在庫もほとんどありません。
おかげさまで幸先のいい新年度となりました。

しかも、『艦これ』のお客さんは普段カードゲームを遊んでいなかった、新規の方も多いんですね。作品のファンにも喜んでもらって、カードゲーム市場もトレンドを取り込んで盛り上がる。『ヴァイスシュヴァルツ』ならではの最高の関係性だと思います。
そして、新規ユーザーとしてもっとも大切にしなくてはいけないのが子供たち。小学生ユーザーです。このコラムでも、ほかの場所でも、何度でも言ってきましたが、子供たちが遊んでいないホビーはいずれ衰退します。
ですから、3年に一度は小学生も遊ぶビッグタイトルが必要なんです。弊社では今年から『バディファイト』を展開していますし、小学生を中心に大きな話題となっているレベルファイブさんの『妖怪ウォッチ』にも注目しています。

ここ2年、下降トレンドだったカードゲーム市場ですが、昨年末でいったん、底を打ったように思えます。ですが、それは人口が集中している東京や大都市圏でのこと。

先日、新潟、富山、石川と、北陸3県のショップ巡りをしてきたんですが、地方都市はまだ大型タイトルに頼っていて、減少傾向に歯止めがかかっていません。
地方と都心部の景気格差もありますが、地方では中規模タイトルに絞ってお店の個性を出す余裕がないのかもしれません。大型タイトルがコケはじめると、伸びている中規模タイトルで補いきれないですから。
市場の停滞、衰退は地方から如実に現れますし、ダメージからの回復も遅れます。
ショップがなくなってしまったエリアで新規のユーザー層を呼び込むのは不可能ですから、全体だけ、都市部だけのデータで回復してきたと判断するのは楽観的すぎると思います。

余談ですが、地方では『マジック・ザ・ギャザリング』の人気が安定しているんですね。パック売りの規模はそこそこでも、シングルカードがぐるぐる回転しているそうです。歴史が長く、カードの資産価値が世界的に確立されている『マジック』ならではの特性です。

さて、今回、お話ができた北陸に限らず、ショップの経営者さんたちは、カードゲーム市場の将来に強い不安を抱いています。
全体的に中学生が減った、というんです。これはもうスマホの普及があり、昨年末には3DSの影響が上乗せされたからです。

今後もスマホの普及率は伸びるでしょうし、最初に手にする年齢層は小学生へと下がってくるでしょう。
中学生がカードゲームから離れてしまうのは、市場の将来を考えると大きな懸案です。小学生の頃、一度でも手にした経験がある遊びなら、高校生や大学生で再開するかもしれませんし、大人になってから子供と一緒に遊ぶこともあるでしょうけど、一度も経験のない遊びは興味がない、関係がないものとして視界に入ってきません。
ですから、くどいようですが、小学生ユーザーの新規獲得は非常に大切なことなんです。
それも、ちょっとしたヒットでなく、一発で点が入るホームランを打たないといけません。

地方でも、今は路面店の元気がないんですね。駅前や繁華街のビルのテナントとか、イオンなど大型ショッピングモールの中の店舗のほうが勢いがある。CARD BOXさんが展開している、書店の中のカード売場も存在感があります。

かつては専門店でしか手に入らないし、遊ぶ場所も限られていたカードゲームですが、今や”普通”のおもちゃのひとつになりました。
ショップの売れ行きが立地で左右されるのも、”普通”の遊びになったことを示しています。
普通に買い物に来たひと、面白い遊びを探しにきた人を捕まえて、新規のカードゲームユーザーとして引き込めるのか? そこが現在のカードゲーム市場に求められる商品でしょう。

タイトルが増えるにつれ、お客さんにとっては面白くて遊び続けられるカードゲームを見つける苦労も増えています。
お店の審美眼や遊ぶ現場を盛り上げる努力あってこそ、市場が成り立っています。

カードゲーム市場がここまで大きくなったのは、間違いなく専門店のおかげです。
ブシロードは、お店からの声をもっと聞きたい。市場を支えるパートナーとして声を聞かせていただきたいですね。

もっと迅速に、もっと適切に、お客さんのところへ商品を届けたいんです。
そのための流通改革も、課題です。

子供向けの新規タイトルが重要になるほか、デジタル型のカードゲームでは、筐体の中で印刷して提供するデータ排出型が新しい役割を担う存在だとにらんでいます。まだ具体的には話せませんが……。

ショップ経営者のみなさん、ご意見あれば、ぜひ木谷までぶつけてください。
一緒にカードゲーム市場の未来を作っていきましょう!